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1996年の邦楽ポップス名曲ベスト20

1996年にリリースされた邦楽ポップスからヒットしたものとしていないものが混じってはいるが、これは名曲なのではないかと思える20曲を挙げていきたい。

20. JAM – THE YELLOW MONKEY

THE YELLOW MONKEYの9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高6位を記録した。バンドのレパートリーの中ではファンの間でもひじょうに人気が高い楽曲となっている。

モット・ザ・フープル「すべての若き野郎ども」のようなロックアンセムが念頭におかれ、沢田研二「おまえがパラダイス」と共通するところもあるという。

世の中の不条理を認識しながらも強い思いを持ち続けることについて歌われていて、そのヘヴィーな内容からレーベルは当初、この曲をシングルとしてリリースすることを渋っていたという。

海外で起こった飛行機墜落事故のニュースでキャスターが乗客に日本人がいなかったことをうれしそうに伝えるくだりは、当時、吉井和哉が実際にテレビで見た映像にインスパイアされたと語られている。

19. イージュー★ライダー – 奥田民生

奥田民生のソロアーティストとしては6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは最高4位を記録した。

タイトルは業界用語で30を意味する「イージュー」と映画「イージー・ライダー」のタイトルをかけたものである。このシングルが発売された当時、奥田民生は31歳の誕生日を迎えてから約40日で、前年にリリースされたアルバムのタイトルは「30」であった。

「名曲をテープに吹き込んで」という歌詞から、当時の録音メディアの主流がまだカセットテープであったことが窺える。

18. 世界の終わり – THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのメジャーデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングでは圏外だったが、バンドの代表曲の1つとして知られている。

ガレージロックやパブロックから影響を受けた音楽性は当時のJ-POPシーンとはほとんど関係がないものだったが、後に絶大な支持を受けるようになっていく。

AKB48のまゆゆこと渡辺麻友が兄の影響でファンであり、ブログなどで言及することもあった。

17. 渚 – スピッツ

スピッツの14枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは「空も飛べるはず」「チェリー」に続き、バンドにとって3曲目の1位に輝いた。

草野マサムネが武蔵野美術大学に在学していた時に生物学の国井喜章から聞いた、渚とは陸空海のどれでもないがすべてと関係しているエリアだという概念がモチーフになっているという。

夏がイメージされる楽曲ではあるが、リリースされたのは秋がはじまりかけた9月9日であった(当初は7月7日の予定だったが延期されたようだ)。

16. そばかす – JUDY AMD MARY

JUDY AND MARYの9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングではバンドにとって初の1位に輝いた。

テレビアニメ「るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚」のタイアップが決まり、短期間で新曲を完成させることが要求されたが、どのようなアニメかよく分かっていなく、アニメといわれて思いつくのが「そばかすなんて気にしないわ」で始まるオープニングテーマでおなじみの「キャンディ・キャンディ」ぐらいだったので、「そばかす」をテーマにした曲を書くことになったのだという。

失恋ソングにして「想い出はいつもキレイだけど それだけじゃおなかがすくわ」は名フレーズである。

15. LA・LA・LA LOVE SONG – 久保田利伸 with ナオミ・キャンベル

日本の流行歌にソウル/R&Bが定着する過程で、1986年にメジャーデビューした久保田利伸が果たした役割はひじょうに大きいといえる。

1993年から活動拠点をニューヨークに移した久保田利伸がメジャーデビュー10周年の年にリリースしたこの曲は「月9」こと月曜夜9時からフジテレビで放送されていたドラマ「ロングバケーション」の主題歌に使われ、オリコン週間シングルランキングで初の1位に輝いた。

スーパーモデルのナオミ・キャンベルとはニューヨークで同じマンションに住んでいて、エレベーターで出会い意気投合したことからコラボレーションに至ったという。とはいえ、歌っているのは久保田利伸のみで、ナオミ・キャンベルはセリフを囁いている。

14. 愛の言霊 ~Spiritual Message~ – サザンオールスターズ

サザンオールスターズの37枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングでは「さよならベイビー」「ネオ・ブラボー!!」「涙のキッス」「エロティカ・セブン」「あなただけを~Summer Heartbreak」に続き、6曲目の1位に輝いている(「いとしのエリー」「C調言葉に御用心」「チャコの海岸物語」「メロディ(Melody)」「みんなのうた」はいずれも最高2位止まりである)。

ラップの導入や無国籍的な言語感覚など、メインストリームのベテランバンドであるにもかかわらず実験精神が見られるところが本当にすごい。

13. DEPARTURES – globe

小室哲哉、KEIKO、マーク・パンサーからなる音楽ユニット、globeの4枚目のシングルで、この年の元旦に発売され228.8万枚の売り上げ、オリコン週間シングルランキングではもちろん1位に輝いた(年間ではMr.CHILDREN「名もなき詩」に次ぐ2位であった。

90年代半ばのJ-POPシーンをメインストリームにおいて席巻していたのは「渋谷系」ではなく小室サウンドなのだが、それは若者に人気の娯楽であるカラオケの要素をクラブミュージックに取り入れたものであった。

竹野内豊と江角マキコが出演したJR東日本、JR Ski SkiのCMソングでもあったこの曲は、カジュアルなエンターテインメント性に日本人らしいウェットな情緒をまぶし、スケールをナチュラルな範囲内で最大化した名曲といえるような気がする。

12. Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ – YEN TOWN BAND

岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」に登場する架空のバンド、YEN TOWN BANDのシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

映画に女優として出演しているシンガーソングライターのCHARAがリードボーカルを取り、自身名義の楽曲と併せても初の1位獲得曲となった。作編曲、プロデュースをMr.CHILDRENやMY LITTLE LOVERの作品で絶好調だった小林武史が手がけている(YEN TOWN BANDのメンバーでもある)。

11. チェリー – スピッツ

スピッツの13枚目のシングルで、オリコン週間シングルで1位に輝いた。

チェリーといえば桜であり、春らしい気分が感じられるとても良い曲なのだが、何のタイアップもなくただ曲と歌詞と歌と演奏が良いというそれだけで大ヒットしてしまうという事実そのものが、わりとすごいことのように感じられた。

それにしても、「”愛してる”の響きだけで 強くなれる気がしたよ」というフレーズの無敵さよ。

10. Garden City Life – カーネーション

カーネーションの7作目のアルバム「GIRL FRIEND ARMY」からの先行シングルで、オリコン週間シングルランキングでは圏外に終わっている。

とはいえ、恋する大人の男の心情をヴィヴィッドに描写した素晴らしいポップソングになっている。「なんだかうまくいえないんだな だれよりきみが欲しいだけなんだな」というシンプルにして真実でしかないフレーズがそれを簡潔に物語っている。

9. アジアの純真 – PUFFY

TM NETWORKの小室哲哉がプロデューサーとして成功したのを受けてか、アーティストによるプロデュース活動というのも少し盛んになっていて、奥田民生が手がけたのが大貫亜美と吉村由美の2人組、PUFFYである。

井上陽水のナンセンス的な歌詞と奥田民生の洋楽マニア的な特性が生かされた作編曲がメンバーの自由でゆるい雰囲気と相まって、社会現象的ともいうべきブームを巻き起こした。実はいろいろとしんどくなりはじめていた日本の社会情勢において、大衆が無意識的に欲していた価値観がそこにあったのかもしれない。

8. Little Jの嘆き – GREAT 3

元ロッテンハッツの片寄明人、高桑圭、白根賢一によって結成されたGREAT 3のCDは渋谷の特に外資系のCDショップで特に良く売れていたといわれる。当時、日本のポップミュージックはあまり積極的に聴かないのだが、GREAT 3の音楽は大好きだというリスナーが少なからず存在していたことが確認できている。

洋楽テイストの音楽性はJ-POPのメインストリームとなるにはハイセンスすぎたかもしれないが、このバンドの最大の魅力はボーカリストでソングライターである片寄明人の狂気スレスレで致死量レベルの切なさの表現である。

家が取り壊された後に残された門のインターホンを意味もなく押し続けているうちに涙がこぼれてくる、恋人との愛を噛みすぎて味がしなくなったガムにたとえる、サビの歌詞が「神様 あぁ 勝ち目はない 僕はダメだよ 憎めない さよならもいえない あぁ」であるなど、とにかく心理状態によってはたまらない気分にさせられたり救いにもなったりする曲である。この曲を歌いたいがために、UGAの機会が設置されたカラオケボックスを探したことが思い出される。

7. プライマル – Original Love

ピチカート・ファイヴのボーカリストと兼任していた田島貴男が専念するために脱退し、それからは本人は拒絶していたものの「渋谷系」の一味と見なされていたOriginal Loveは、この時点ではソロプロジェクト化していた。

テレビドラマ「オンリー・ユー~愛されて~」の主題歌でもあり、オリコン週間シングルランキングで最高5位を記録したこの曲は「渋谷系」の内輪ノリ的な域を超えて、れっきとしたメインストリームであった。

6. Don’t wanna cry – 安室奈美恵

90年代の渋谷のサウンドトラックといえば、一般大衆レベルでは「渋谷系」ではなく小室サウンドであった。それならば全国津々浦々と同様ではないかとも思われがちではあるが、現地なりのヴィヴィッド感というのは明らかにあったような気がする。

バブル景気の名残を引きずり、まだまだ楽観的であった大人たちに比べ、当時の10代はなんとなく確実にしんどくなりつつある社会の感じというのをより切実に感じ取っていたのだろうか。

メインストリームのJ-POPとしての範疇でゴスペル音楽の要素を絶妙に取り入れているこの曲の深層には切実で本質的な祈りの感覚があり、それこそがサイン・オブ・ザ・タイムスだったような気もする。

5. サマー・ソルジャー – サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービスの5枚目のシングルで、夏をテーマにした曲にもかかわらず発売されたのは10月25日であった。オリコン週間シングルランキングでの最高位は65位である。

夏の暑さにやられている状況というのを望ましくないと感じる人々も少なくはないことも承知ではあるのだが、あれは面倒がなく最高の状態であり、できればそれが永遠に続いてはくれないものだろうかと起こりえない奇跡を願ったりもする。

そして、この曲はそういった気分を共有にているようにも感じられる。それは天気のせいであり、そこから先はHey hey heyである。

4. 100 LOVE-LETTERS – 原田知世

スウェーデンのインディーポップバンド、カーディガンズのCDが90年代の日本、特に都市部ではよく売れたといわれていて、体感的には渋谷のパルコクアトロにあったWAVEが特にすごかったような気がする。

それはそうとして、J-POPの世界でもスウェディッシュポップが少し盛り上がって、カジヒデキやBONNIE PINKが代表例であった。

原田知世は80年代に角川事務所の女優兼アイドル歌手としてひじょうに人気があり、その後も音楽活動はわりと積極的に行っていた。90年代後半にはカーディガンズなども手がけたトーレ・ヨハンソンをプロデューサーに迎え、スウェディッシュポップ的な作品もリリースしていく。

この曲はトーレ・ヨハンソンのプロデュースにより、スウェディッシュポップの聖地、タンバリン・スタジオでレコーディングされ、SUZUKIアルトのCMソングだったにもかかわらず、オリコン週間シングルランキングでは圏外であった。

とはいえ、とても良い曲であることは間違いなく、恋人との程よい距離感をテーマにした鈴木慶一による歌詞も素晴らしい。

3. 情熱 – UA

UAの4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高18位を記録した。

クラブミュージック的な音楽は日本のポップスにも影響をあたえはじめていたのだが、あくまでスノビッシュで閉じられた空間においてであり、一般大衆的にはまだまだという感じでもあった。

しかし、この曲はわりとしっかりとクラブミュージック的でもあるのだが、コンビニやビデオレンタルショップのスピーカーから流れていても普通にとても良いという大衆性を兼ね備えてもいた。チャートでの最高位以上に影響力は強かったように思える。

2. メッセージ・ソング – ピチカート・ファイヴ

ピチカート・ファイヴといえば「渋谷系」だが、11枚目のシングルにあたるこの曲はスノビッシュでもハイセンスでもない一般大衆にも分かりやすくてとても良い。NHKの「みんなのうた」でも流れていたようだ。

「雪の降る日 何もかもがとてもなつかしくなる」というフレーズは札幌出身の小西康陽らしいものであり、冬には雪が日常的に降る地域の出身者ならば共感できるのではないだろうか。オリコン週間シングルランキングでは最高68位を記録した。

1. BABY BLUE – フィッシュマンズ

フィッシュマンズがこの年の2月にリリースした「空中キャンプ」といえば、はっぴいえんど、シュガー・ベイブ、大滝詠一、フリッパーズ・ギター(小沢健二、コーネリアス)、ザ・ブルーハーツ、ゆらゆら帝国などのアルバムと同様に、日本のロック&ポップス歴代ベストアルバム的なリストでは名前が挙がりがちな印象がある。

当時のオリコン週間アルバムランキングでの最高位は88位で、シングルカットされたこの曲は最高59位である。レゲエやダブの影響を取り入れたサウンドと文学的な歌詞に特徴があり、ロックやポップスとクラブミュージック、両方の要素を兼ね備えている。

「意味なんかない 今にも僕は泣きそうだよ」「このまま連れてってよ」と歌われるボーカルは彼岸から聴こえているようでもある。

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