クリスマスソングの名曲ベスト50
街はすっかりクリスマスムードであり、ポップ・ミュージックを扱っている以上、やはりクリスマスソングの名曲ベスト50を選んでいきたいという気分にもなる。いろいろな年代やジャンルのクリスマスソングの中から、これは特に本当に良いではないかというもののみを厳選し、お届けしていきたい。
50. I Was Born On Christmas Day – Saint Etienne (1993)
セイント・エティエンヌが1993年のクリスマスシーズンにリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで最高37位を記録している。サラ・クラックネルとデュエットしているのは、ザ・シャーラタンズのティム・バージェスである。メンバーのボブ・スタンレーはこの曲のタイトル通り、クリスマスの日に生まれている。
49. 12月24日 – Pizzicato Five (2000)
2001年3月31日に解散したピチカート・ファイヴの最後のシングルだが、リリース時にはまだそのことが発表されていなかった。このユニットがかつて描写した華やかな街の風景は永遠に失われてしまい、六本木からWAVEが無くなって渋谷にはQFRONTができていたのだが、それでもあの頃の残り香のような楽曲は新曲として発売された。
48. Please Come Home For Christmas – The Eagles (1978)
邦題は「ふたりだけのクリスマス」で、ブルース・シンガーでありピアニストのチャーリー・ブラウンが1960年にリリースした曲のカバーである。ロッカ・バラード調でどこか懐かしさも感じさせる楽曲である。「ホテル・カリフォルニア」的なしんどさから、解放されたような良さが感じられる。全米シングル・チャートでは最高18位を記録した。
47. Stay Another Day – East 17 (1994)
イギリスではクリスマスの週に全英シングル・チャートで1位になることにひじょうに価値があるとされていて、今年のクリスマスNO.1はどの曲か、ということが話題になったりするらしい。イースト17は当時、テイク・ザットと並んで人気があった男性ポップ・グループであり、このバラード曲でこの年のクリスマスNO.1に輝いた。特にクリスマスソングというわけではなく、メンバーの兄弟の自殺について歌われているのだが、クリスマスNO.1のイメージがひじょうに強く、アレンジ面などにおいてそれに寄せていたのだろうとも想像することができる。
46. シャ・ラ・ラ – サザンオールスターズ (1980)
サザンオールスターズや桑田佳祐には他にもっとヒットしたり有名なクリスマスソングもあるのだが、ここでは1980年に「ごめんねチャーリー」との両A面シングルとして発売され、オリコン週間シングルランキングで最高29位を記録したこの曲を挙げておきたい。デビューしてすぐにヒット曲を連発した後、音楽制作に集中するため意図的にメディア露出を減らしていた時期にリリースしたシングル曲の一つである。ボーカルはまだ結婚していなかった頃の桑田佳祐と原由子のデュエットで、カップルが年の瀬に一年を振り返る内容になっている。
45. Frosty The Snowman – Cocteau Twins (1993)
コクトー・ツインズが1993年のクリスマスシーズンにリリースした「スノーEP」に収録されていた、スタンダードナンバーのカバーである。EPといっても2曲入りで、もう1曲はやはりクリスマスのスタンダード「ウィンター・ワンダーランド」であった。エリザベス・フレイザーの幻想的なボーカルが、オリジナル楽曲とはまた異なった魅力を放っているように感じられる。
44. スライド – Flipper’s Guitar (1990)
フリッパーズ・ギターが「カメラ・トーク」という素晴らしいアルバムを発表した1990年を締めくくるようにリリースしたシングル「LOVE TRAIN」のカップリング曲として収録されていたのが、クリスマスをテーマにしたこの曲である。「LOVE TRAIN」がギター・ポップだったのに対し、この曲は打ち込みを用いた幻想的なポップスとなっていて、当時、ビートルズ「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のカバーをヒットさせていたキャンディ・フリップからの影響も感じられた。求人情報誌「an関西版」のCMにも使われていたようなのだが、これは見たことがない。
43. ジングルガール上位時代 – Tomato n’ Pine (2011)
2012年まで活動していた日本の女性アイドルグループ、Tomapai(トマパイ)ことTomato n’ Pineの結果的にラストシングルとなった楽曲である。楽曲派アイドルポップスの名盤としても知られるアルバム「PS4U」にも収録されているが、クリスマスに恋人と会う女の子のワクワク感がヴィヴィッドに表現された素晴らしい楽曲であり、パフォーマンスである。オリコン週間シングルランキングでは、最高68位を記録している。
42. Little Saint Nick – The Beach Boys (1963)
初期のビーチ・ボーイズといえば、サーフィン/ホットロッドをテーマにした楽曲で有名だとされているのだが、サーフィンはまだ分かるのだが、ホットロッドとはカスタムカーのようなもののことである。1963年にヒットした「リトル・デュース・クーペ」もそんなホットロッド・ソングのうちの一つだが、この曲はそれをサンタクロースのそりに置き換えたような楽曲であり、その年のクリスマス・シングル・チャートで3位を記録したようである。
41. すてきなホリデイ – 竹内まりや (2001)
竹内まりやがケンタッキーフライドチキンのCMのために書き下ろした曲で、2000年のクリスマスシーズンからテレビでは流れていたのだが、CDとしては翌年のシングル「ノスタルジア」のカップリングとして発売された。クリスマスはいつしか恋人たちの特別な日のようにもなっていたのだが、この曲は家族で過ごすクリスマスをコンセプトにというケンタッキーフライドチキンからの依頼に沿った内容となっている。竹内まりやとケンタッキーフライドチキンといえば、90年代には「今夜もHearty Party」もクリスマスのキャンペーンソングとして使われていた。
40. Christmas Time Is Here – Vince Guaraldi Trio (1965)
「スヌーピーのメリークリスマス」は1965年に放映されたアニメーションの特別番組であり、以来、アメリカではクリスマスのスタンダードとして親しまれているということである。ジャズ・ピアニストで作編曲家であるヴィンス・ガラルディによるサウンドトラックの人気も高く、いくつかの曲はスタンダードとして知られてもいる。この曲は当初、インストゥルメンタル曲だったということなのだが、番組プロデューサー自らが歌詞を書いたのだという。
39. Santa Tell Me – Ariana Grande (2014)
アリアナ・グランデによるクリスマスソングで、2014年のクリスマスシーズンに配信され、CDとしてはミニアルバム「クリスマス・キス」の日本盤に収録された。クリスマスソングらしい曲調やアレンジに加え、サンタクロースに恋の行方について問いかける歌詞もキュートでとても良い。2018年の「サンキュー、ネクスト」はクリスマスソングではないものの、ミュージックビデオでアリアナ・グランデがサンタクロースのコスプレをしているので要注目である。
38. Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow! – Frank Sinatra (1950)
この曲はクリスマスのスタンダードで、1945年の熱い真夏にサミー・カーンとジューリー・スタインによって書かれたという。様々なアーティストによってレコーディングされているが、ここではフランク・シナトラによるゴージャスなバージョンを挙げておきたい。
37. Christmas Rappin’ – Kurtis Blow (1979)
カーティス・ブロウはラップがまだそれほどポピュラーではなかった1980年に「The Breaks」をヒットさせたことで知られるが、その邦題は「おしゃべりカーティス」であった。つまり、ラップはおしゃべりと解釈されていたわけだが、その前の年にはクリスマスラップもすでにリリースしていて、それがこの曲というわけである。
36. Father Christmas – The Kinks (1977)
パンク・ロックが盛り上がっていた1977年ぐらいにキンクスがどのような活動をしていたかについては、ポップ・ミュージック史をダイジェスト的に追っているだけではよく分からなかったりはするのだが、このクリスマスシングルはリリースしていたようである。当時、全英シングル・チャートにもランクインしなくなっていたようで、この曲についても記録はない。とはいえ、百貨店のサンタクロースを裕福ではない子供たちが殴り、おもちゃではなく現金をよこせ、おもちゃは他の金持ちの子供にくれてやれ、というようななかなか過激な内容になっていて良いものである。
35. Merry Christmas (I Don’t Want To Fight Tonight) – Ramones (1989)
本当にいろいろなジャンルのアーティスト達がクリスマスソングをリリースしているものだが、パンクロックではラモーンズのこの曲である。とはいえ、1989年のアルバム「ブレイン・ドレイン」の収録曲であり、ラモーンズはすでにベテランの域に達している頃である。ビートパンクからの流れで、当時は「宝島」を読んでいるような日本のキッズ達の中にもパンクファッションに身をつつみ、ラモーンズなども聴いている人達が少なくもなかったような気がする。クリスマスなので今夜は争いたくはない、というようなことが歌われている。
34. Run Rudolph Run – Chuck Berry (1958)
ロックンロールの創始者ともいわれるチャック・ベリーもまた、クリスマスソングをリリースしていた。ベルの音を入れるなどといったクリスマスらしい演出は特になく、いかにもチャック・ベリーらしいロックンロールなのだが、ご機嫌なのでそれで良いというものである。歌詞には当時の子供たちに人気があったと思われるおもちゃのことが入っていたりもする。当時の全米シングル・チャートでの最高位は69位だったが、2021年1月2日付のチャートにおいては発売から60年以上経って、初のトップ10入りを果たしている。
33. 恋人がサンタクロース – 松任谷由実 (1980)
日本のアーティストが歌うクリスマスソングといえば、というような質問にいろいろな世代の人達からわりと多めに挙げられそうな、ユーミンこと松任谷由実の楽曲である。1980年のアルバム「SURF&SNOW」の収録曲で、実はシングルではリリースされていないにもかかわらず、ひじょうに有名である。1982年に松田聖子がクリスマスアルバム「金色のリボン」でカバーしたり、1987年の映画「私をスキーに連れてって」で使われたりしているうちに、どんどん知名度を上げていったような気もする。そして、クリスマスが家族で過ごす特別な日から、恋人たちの一大イベントへとそのイメージを変えていく上で、この曲の影響はひじょうに大きかったのではないかとも思われる。
32. 8 Days Of Christmas – Destiny’s Child (2001)
デスティニーズ・チャイルドが2001年にリリースしたクリスマスアルバムのタイトルトラックである。鈴の音と「ジングル・ベル」のメロディーから、一瞬にしてデスチャ節とでもいうべきR&Bサウンドと素晴らしいボーカル・パフォーマンスが展開される。ビヨンセは21世紀になってから最も重要なアーティストの一人であり、それはソロ・アーティストになったからこそというところももちろんあるのだが、やはりデスティニーズ・チャイルドもとても良いなと改めて感じさせられる。
31. Step Into Christmas – Elton John (1973)
この曲がクリスマスシングルとしてリリースされた1973年のエルトン・ジョンといえば、最高傑作ともいわれるアルバム「黄昏のレンガ路」をリリースした頃であり、シングルの発売順としては「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」と「ベニーとジェッツ(やつらの演奏は最高)」というヒット曲の間ということになる。フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドに影響を受けたようにも思えるサウンドと、軽快な演奏とボーカルが気分を盛り上げてくれる。