キャロル・キングが作曲した名曲ベスト10

1942年2月9日生まれのキャロル・キングは、2022年で生誕80周年を迎えた。1971年のアルバム「つづれおり」はシンガーソングライターブームを代表する名盤として知られているが、キャロル・キングはそれ以前にもジェリー・ゴフィンとのコンビなどでソングライターとして数々のヒット曲を世に送り出していた。

今回はキャロル・キングのソロアーティストとしての楽曲と他のアーティストに提供した曲の中から、これは名曲なのではないかと思える10曲を厳選していきたい。

10. Pleasant Valley Sunday – The Monkees (1967)

モンキーズの4作目のアルバム「スターコレクター(原題:Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd)」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高3位のヒットを記録した。

ポップでキャッチーで爽やかにも感じられるロックチューンだが、都会から郊外に引越し、その不便さに辟易していたジェリー・ゴフィンの心境が反映した曲だともいわれている。

キャロル・キングによるデモバージョンは2012年にリリースされたコンピレーションアルバム「レジェンダリー・デモ」で聴くことができる。

9. It Might As Well Rain Until September – Carole King (1962)

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンがボビー・ヴィーに提供した「サヨナラベイビー(原題:Take Good Care Of My Baby)」は全米シングル・チャートで1位に輝く大ヒットとなったのだが、この曲はアルバム収録曲としてしかリリースされなかった。

キャロル・キングによるデモバージョンをあまりにも気に入った音楽プロデューサーのドン・カーシュナーが自身のレーベルからシングルとしてリリースすると、全米シングル・チャートで最高22位、全英シングル・チャートでは最高3位を記録し、キャロル・キングにとってアーティストとしては初のヒット曲となった。

8. One Fine Day – The Chiffons (1963)

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンがガールズポップグループ、シフォンズに提供した曲で、全米シングル・チャートで最高5位を記録した。キャロル・キングによるセルフカバーバージョンは1980年にリリースされ、全米シングル・チャートで最高12位を記録している。

当初はリトル・エヴァに提供する目的で書かれていたのだが途中で断念してトーケンズに渡したところ、プロデュースした「ヒーズ・ソー・ファイン」が全米シングル・チャートで1位に輝いたシフォンズに提供され、タイトルに「ファイン」が入った曲で2曲連続のヒットを記録した。ちなみにこの後に「ア・ラヴ・ソー・ファイン」をリリースするが、これは最高40位に終わっている。

7. Up On The Roof – The Drifters (1962)

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンがドリフターズに提供し、全米シングル・チャートで最高5位を記録した曲である。

世界に押しつぶされそうになり、人と顔を合わせることにさえ嫌気がさす時には階段のてっぺんまで上ると悩みは宙に消えていく、屋根の上はとてもピースフルな場所、というようなことが歌われていてとても良い。

6. You’ve Got A Friend – James Taylor (1971)

キャロル・キングがアルバム「つづれおり」のためにレコーディングした曲で、ジェームス・テイラーによるカバーバージョンが全米シングル・チャートで1位に輝き、翌年のグラミー賞では最優秀男性ポップボーカル賞と最優秀楽曲賞を受賞している。

キャロル・キングにとってはひじょうにナチュラルに書けた曲だということだが、ジェームス・テイラーの1970年のヒット曲「ファイアー・アンド・レイン」に対するアンサーのようになっているところもある。

ジョニ・ミッチェルはバッキングボーカルでキャロル・キングとジェームス・テイラー、いずれのバージョンにも参加している。「君の友だち」の邦題でも知られ、90年代にはアシッドジャズのブラン・ニュー・ヘヴィーズによってもカバーされた。

5. So Far Away – Carole King (1971)

キャロル・キングのアルバム「つづれおり」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高14位を記録した。邦題は「去りゆく恋人」である。

他のアーティストに提供した楽曲のセルフカバーを含め、収録曲のすべてが名曲だともいえる「つづれおり」の中でも、キャロル・キングのシンガーソングライターとしての魅力を存分に味わうことができる楽曲である。

恋人との心理的な隔たりという多くの人々にとって共感しうるテーマが、哀感とニュアンスにとんだボーカルとピアノの演奏によって余すことなく表現されている。

4. The Loco-Motion – Little Eva (1962)

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンがディー・ディー・シャープに提供しようとしたのだが却下されてしまったため、夫妻のベイビーシッターであったリトル・エヴァが歌ってリリースしたところ、全米シングル・チャートで1位に輝く大ヒットとなった。

1974年にはグランド・ファンクがロック調にアレンジしたカバーバージョンで全米シングル・チャートの1位に輝き、1988年にはカイリー・ミノーグがユーロビート調でカバーして全英シングル・チャートで最高2位のヒットを記録した。

日本では1962年に伊東ゆかりによって日本語カバーされたり、2006年にORANGE RANGEがリリースしてオリコン週間シングルランキングで1位に輝いた「ロコローション」があまりにもこの曲と似ていたことからカバー曲扱いにされたりもした。

3. Will You Love Me Tomorrow – The Shirelles (1960)

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンによってガールズポップグループ、ザ・シュレルズに提供され、全米シングル・チャートで1位に輝いた曲である。

キャッチーなガールズポップでありながら、「just a moment’s pleasure」など性愛を連想させもするところもあり、これはひと時の快楽にすぎないのか、それともこれからも続いていく宝物のような関係なのか、という永遠のテーマがティーンエイジアンセムとして結実している。

キャロル・キングによるセルフカバーバージョンは、「つづれおり」で聴くことができる。

2. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman – Aretha Franklin (1967)

アトランティック・レコードの共同オーナーで音楽プロデューサーでもあったジェリー・ウェクスラーがアフリカ系アメリカ人の音楽文化について研究をしていたところ、「ナチュラル・マン」という概念にいきあたったらしく、ニューヨークの街で偶然に出くわしたキャロル・キングに「ナチュラル・ウーマン」をテーマに曲を書いてほしいと依頼したのがはじまりだったという。

キャロル・キングとジェリー・ゴフィンはその夜のうちにこの曲を書いたということだが、このような経緯のため、クレジットにはジェリー・ウェクスラーの名前も加わっている。

アレサ・フランクリンによってレコーディングされたこの曲は、全米シングル・チャートで最高8位を記録した。キャロル・キングは完成した音源を聴いて、この曲を書いたことをひじょうに誇らしく感じたという。2015年にはケネディ・センター名誉賞受賞を称えてこの曲を弾き語ったアレサ・フランクリンにキャロル・キングが号泣、当時のバラク・オバマ大統領も思わず涙するという感動的な場面があった。

メアリー・J・ブライジやセリーヌ・ディオンをはじめ、多くのアーティストによってカバーもされている。キャロル・キングによるセルフカバーバージョンは、「つづれおり」に収録されている。

1. It’s Too Late – Carole King (1971)

キャロル・キングのアルバム「つづれおり」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで5週連続で1位に輝いた。邦題は「イッツ・トゥー・レイト(心の炎も消え)」で、ジェームス・テイラーとの破局をテーマにトニー・スターンが1日で書き上げた歌詞に、キャロル・キングが曲をつけたといわれている。

個人的には大学の休暇中で実家に帰省していた時に佐野元春のラジオ番組で初めて聴いて、そのたまらなくアンニュイでグルーミーな感じにすぐに引き込まれた記憶がある。一人暮らしをしていたワンルームマンションに戻った後、相模原のすみやというCDショップでキャロル・キングのベストアルバムを買った。

リリースされてからその頃ですでに15年以上が経過していたのだが、「イッツ・トゥー・レイト(心の炎も消え)」というタイトルのこの曲をはじめて聴くのに遅すぎることはけしてなかったし、発売50周年を過ぎた現在でもそれは変らない不朽の名曲だということができる。