クリスマスソングの名曲ベスト50
10. Wonderful Christmas Time – Paul McCartney (1979)
1979年のクリスマスシーズンにリリースされ、全英シングル・チャートで最高6位を記録した。アルバム「マッカートニーⅡ」のセッション中にレコーディングされていて、すべての楽器をポール・マッカートニー自身が演奏している。ウィングスのメンバーはレコーディングに参加していないが、ミュージックビデオには出演している。
9. Christmas Wrapping – The Waitresses (1981)
アメリカのニュー・ウェイヴ・バンド、ザ・ウェイトレスィズがレーベルのクリスマスアルバムのために提供した曲で、イギリスではシングルがリリースされ、翌年の再発時に全英シングル・チャートで最高45位を記録した。デジタルストリーミング時代以降、再評価されているような印象がある。
クリスマスについて煩わしく感じている独り身の女性が今年はたった一人で過ごそうと自分用の小さなローストチキンを焼くのだが、クランベリーを買い忘れていたことに気づき、24時間営業のスーパーに行くと、数ヶ月前に出会って気に入っていたもののその後は会えずにいた男性とバッタリ出くわし、ハッピーエンドという内容である。音楽的にはシック「グッド・タイムス」のベースラインや、ボーカルにはラップミュージックからの影響が感じられる。
8. River – Joni Mitchell (1971)
ジョニ・ミッチェルのアルバム「ブルー」に収録されている曲で、シングル・カットはされていないもののひじょうに人気がある。恋が終わって心の痛みをかかえた状態のままクリスマスを迎えることについて歌われているのだが、これが多くの人々の共感を呼んでいると思われる。
7. Christmas (Baby Please Come Home) – Darlene Love (1963)
フィル・スペクターのクリスマスアルバム「クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター」はこのジャンルのスタンダードにして最高傑作ともいわれたりもしているが、リリース当時にはそれほど売れなかったようである。というのも、発売日にケネディ大統領暗殺事件が起こり、アメリカ国内は祝祭ムードとは程遠かったともいわれる。しかし、その後このアルバムは多くのポップスファンに聴かれ続け、マスターピースとして知られるようになった。
いくつかのアーティストが参加したコンピレーション・アルバムではあるのだが、プロデューサーの名前が前面に出ているというのはわりと異例のことではないかというような気もするのだが、フィル・スペクターなら納得というものである。ウォール・オブ・サウンドと呼ばれる音を重ねることによって臨場感を出すような手法が、ここでも大いに用いられている。収録曲の中でも特に人気が高いのがダーレン・ラヴによるこの曲であり、多くのクリスマスソングチャートやプレイリストにもよく選曲されている。
6. White Christmas – Bing Crosby (1947)
ビング・クロスビーがこのクリスマスソングのスタンダードを初めて歌ったのは1941年のラジオ番組だったといわれているが、この時の録音は残っていないようだ。翌年、映画「スイング・ホテル」で使われた曲を集めたアルバムに収録され、その年のクリスマスシーズンに大ヒットしたという。古き良き時代のクリスマスを夢見ているようなノスタルジックな雰囲気が当時にしてすでに感じられたということだが、これが第2次世界大戦下で暗い時代に受けたともいわれている。
今日、スタンダードとして親しまれているバージョンは、1947年に再レコーディングされたバージョンである。この曲は世界で最も多く売れたレコードとして、ギネスブックにも記録されているということである。
5. クリスマス・イブ – 山下達郎 (1983)
この曲を収録したアルバム「MELODIES」は1983年6月8日にリリースされ、季節はずれのクリスマスソングという印象ではあったが、パッヘルベルの「カノン」が引用されたところを含め、間違いなくアルバムの中でもひじょうにクオリティーが高い曲であることは分かった。その年のクリスマスシーズンにシングルカットされるのだが、当時のオリコン週間シングルランキングでの最高位は44位であった。すでにアルバムが大ヒットしていたため、約半年後にシングルで買おうという人もそれほど多くはなかったような気がする。「夏だ!海だ!タツローだ!」という言葉もあったぐらいで、当時の山下達郎の音楽には夏のイメージがひじょうに強かった。
80年代後半、日本のバブル景気は恋愛市場をも特に潤し、商業主義とも結びついた「純愛」ブームに多くの人々は乗って踊った。JR東海がこの曲をクリスマスシーズンのCMに初めて起用したのは1988年、松任谷由実の純愛三部作では「Delight Slight Light KISS」がリリースされた年である。このシリーズは翌年以降も継続され、発売から6年後の1989年にはついにオリコン週間シングルランキングの1位に輝いたのであった。
4. Last Christmas – Wham! (1984)
1984年のクリスマスシーズンに人気絶頂だったワム!がリリースしたクリスマスソングで、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。ジョージ・マイケルも参加していたバンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」があまりにも強すぎたため1位には上がれず、最も売れた最高2位の曲なのではないかともいわれたりしていたのだが、デジタルストリーミング回数などもチャートに反映されるようになったことなどもあり、2021年1月7日付の全英シングル・チャートでは、ついに1位に輝いたのだった。
3. Happy Xmas (War Is Over) – John & Yoko Plastic Ono Band + Harlem Community Choir (1971)
ジョン・レノンがこの年にリリースした「イマジン」と同様に、フィル・スペクターがプロデュースしている。ハーレム・コミュニティ・クワイアによるコーラスをフィーチャーし、平和への祈りをも込めた素晴らしいクリスマスソングになっている。
2. Fairytale Of New York – The Pogues (1987)
成功を夢見てニューヨークにやって来たアイルランド移民のカップルが年老いて、お互いを罵り合いながらも深い愛情で結ばれている様を描いたデュエットソングである。当初、女性パートはメンバーのケイト・オーリアダンが歌うことになっていたが、レコーディング前にバンドを脱退したため、プロデューサーであるスティーヴ・リリーホワイトの妻、カースティ・マッコールが歌うことになった。この年に全英シングル・チャートで最高2位を記録したが、2005年以降はクリスマスシーズンになると毎年ランクインしていて、2018年以降は4年連続で最高4位を記録している。「ニューヨークの夢」の邦題でも知られるこの曲は、21世紀になってからだとイギリスで最も多くラジオで流れたクリスマスソングとされているようだ。
1. All I Want For Christmas Is You – Mariah Carey (1994)
邦題は「恋人たちのクリスマス」で、日本のオリコン週間シングルランキングでも当時、最高2位のヒットを記録していた。マライア・キャリーの音楽にそれほど興味を持っていなかった音楽ファンの多くはこの曲を単なる流行りもの程度にしか見ていなかったようにも思われるが、時が経つにつれ、いかに歴代のクリスマスソングの名曲に匹敵するクオリティーを持ち、それをリアルタイムのヒット曲として体験できたことの貴重さに気づかされるのであった。
当時、アメリカではシングル・カットされていなかったため、全米シングル・チャートにはランクインしていなかったのだが、デジタルストリーミングの回数などがチャートに換算されるようになったことにより、2019年にはついに1位に輝いたのであった。