2021年間ベスト・ソング50
10. Kiss Me More – Doja Cat feat. SZA
ドクター・ルークと一緒に仕事をしていることなどによって批判されたりするところもあるのだが、そのキャッチーな音楽には抗いがたい魅力がある。SZAをフィーチャーしたこの曲にはその良いところがひじょうに出ていて、とてもポップではあるのだがそこはかとない切なさも感じられるところがとても良い。
9. I Know I’m Funny haha – Faye Webster
アトランタ出身のシンガーソングライター、フェイ・ウェブスターの4作目のアルバム「アイ・ノウ・アイム・ファニー・ハハ」のタイトルトラックで、カントリーテイストのサウンドと乾いたユーモア感覚のようなものがとても魅力的である。アルバムジャケットの写真にも、この音楽の良さを正確に伝えているようなとてつもない良さを感じる。
8. Butter – BTS
2020年の「ダイナマイト」が韓国のアーティストとしては初となるアメリカやイギリスのチャートでの1位に輝いたり、日本では「千鳥のクセがスゴいネタGP」などという番組で、レイザーラモンRGによって「大悟マイト」としてカバーされるほどのヒットとなったBTSだが、この新曲もサマーアンセミック的なたまらないキャッチーさが最高で、やはり大ヒットした。
7. Valentine – Snail Mail
現在、オルタナティヴ・シンガーソングライターというワードが最も相応しいのではないかと思えなくもないのが、アメリカはメリーランド州エリコットシティー出身のリンジー・ジョーダンによるソロプロジェクト、スネイル・メイルであり、2作目のアルバム「ヴァレンタイン」のタイトルトラックであるこの曲においても、90年代のオルタナティヴ・ロックが現在の感覚で切実に再構築されているような素晴らしさが感じられる。
6. Be Sweet – Japanese Breakfast
日本の朝食というアーティスト名が親しみを感じさせるのだが、これはアメリカのバンド、リトル・ビッグ・リーグのミシェル・ザウナーによるソロプロジェクトである。シンセポップとインディーロックを絶妙にミックスしたような、カラフルでポップなサウンドと個性的なボーカルがとても良い。「X-ファイル」などを思い起こさせもするミュージックビデオも楽しい。
5. Introvert – Little Simz
4作目のアルバムにしてニューソウル的でもある名盤「サムタイムズ・アイ・マイト・ビー・イントロヴァート」のオープニングを飾る曲である。アンセミックでありながら聴きやすさもあり、なめらかに自然体なようにも感じられるが、コンシャスでメッセージも強いというその音楽的魅力がコンパクトに味わえるサンプラー的楽曲としても機能するような気がする。
4. drivers license – Olivia Rodrigo
2021年の初めに大ヒットし続けていた、当時18歳のオリヴィア・ロドリゴによるデビュー・シングルである。いわゆる失恋ソングであり、永遠を約束したが別れてしまった恋人の家のそばを運転免許を取ったばかりの自分が車で通り過ぎていくセンチメンタルな気分が、10代の切実さでヴィヴィッドに表現された素晴らしい楽曲である。アメリカやイギリスをはじめとしたヨーロッパ各国など、とにかくたくさんの国々のヒットチャートで1位に輝いた。
3. Happier Than Ever – Billie Eilish
待望の2作目のアルバム「ハピアー・ザン・ビフォー」のタイトルトラックで、シングルでもリリースされた。アルバムアートワークの写真からも感じられるように、音楽的にもよりオーセンティックになり、シンガーソングライターとしての成長が確実に感じられるのだが、特にこの曲などは告白的なバラードではじまり、そのニュアンスがより豊かになった表現力を感じ取っていると、途中からパンクロック的なカタルシスも感じられる展開になっていたりと、底知れなさが際立っている。
2. Chaise Longue – Wet Leg
イギリスはワイト島出身のインディー・ロック・デュオ、ウェット・レッグのデビュー・シングルで、ヒットチャートでは目立った動きをしていないものの、ストリーミングサービスや動画サイトなどでたくさん聴かれたり見られたりした。卓越したポップ感覚が感じられ、さらにどこかアイロニカルな歌詞とボーカルがとても良い。タイトルの「Chaise Lounge」とはラウンジチェアのようなものだと思うのだが、実際にメンバーの祖父の家のそれに座っている時にこの曲ができたらしい。これ以降のシングルもクオリティーが高く、2022年に発売される予定のデビューアルバムはかなり期待されている。
1. good 4 u – Olivia Rodrigo
デビュー・シングル「ドライヴァーズ・ライセンス」が大ヒットした後に「デジャ・ヴ」も評価が高く、バラードのイメージが付きかけた頃に、デビューアルバム「サワー」からシングル・カットされ、またしても大ヒットするのと同時にオリヴィア・ロドリゴがけしてワン・ヒット・ワンダー(一発屋)ではなく(すでに「デジャ・ヴ」にヒットしてはいたが)、新たなポップ・アイコンであることを印象づけた、アップテンポでエネルギーに溢れた楽曲である。自分と別れてからすぐに新しい恋人をつくった元カレにブチ切れているというテーマも、等身大的でとても良い。