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シュープリームス「恋はあせらず」について。

1960年代にヒット曲を連発したダイアナ・ロスを中心とするモータウンの3人組ボーカル・グループといえばシュープリームスだと教わったはずで、当時はなんとなくシュークリームに似ているなと感じたり、米米CLUBのダンサーチームはシュークリームシュだったわけだが、いつしかスプリームスという表記を見るようになり、本当はこっちの方が正しいのでいまはこう表すようになったのか、などと思っていたらApple Musicでのカタカナ表記はシュープリームスだったりと、正味の話よく分からないわけだが、とりあえずシュープリームスということにして話を進めていきたい。

モータウンというのはベリー・ゴーディ・ジュニアという人が1959年にデトロイトで設立したレコードレーベルなのだが、特に60年代にシュープリームス、テンプテーションズ、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、フォー・トップス、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイなどによる数々のヒット曲を世に送り出した。ソウル・ミュージックやR&Bをベースにしているのだが、より一般大衆にも受けそうなポップでキャッチーな音楽性が特徴であり、このレーベルが生み出す音楽のことは「サウンド・オブ・ヤング・アメリカ」などとも呼ばれていたらしい。

モータウン・サウンドなどと呼ばれる音楽の特徴として、独特なビートのパターンがあり、後に多くのポップソングに引用されたり、シンセサイザーやシーケンサーなどにプリセットされていたりもする。シュープリームスが1966年にリリースし、9月10日付の全米シングル・チャートにおいて、ドノヴァン「サンシャイン・スーパーマン」に替わって1位に輝いた「恋はあせらず」には、この特徴が特によく生かされているといえる。恋に悩む娘に、母があせりすぎてはダメで待つことも大切だとアドバイスをするという内容で、1950年代のゴスペル・ソング「ユー・キャント・ハリー・ゴッド」からインスパイアされたものだといわれている。この曲はシュープリームスにとって、「愛はどこへ行ったの」「ベイビー・ラヴ」「カム・シー・アバウト・ミー」「ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ」「涙のお願い」「ひとりぼっちのシンフォニー」に続き、7曲目の全米シングル・チャート1位獲得曲となった。

この曲はアメリカだけではなくイギリスでもヒットして、全英シングル・チャートで最高3位を記録したのだが、この約16年4ヶ月後にあたる1983年の初めにはフィル・コリンズによるカバー・バージョンが1位に輝いている。このバージョンはアメリカでも、最高10位のヒットを記録していた。私が初めて聴いた「恋はあせらず」も、実はシュープリームスのオリジナルではなく、このフィル・コリンズのバージョンである。

1983年にイギリスではヒット曲ばかりをたっぷり収録した2枚組コンピレーション・アルバム「ナウ・ザッツ・ホワット・アイ・コール・ミュージック」の第1弾がリリースされ大ヒット、その後、シリーズ化していくことになるのだが、その記念すべき1曲目に収録されたのはフィル・コリンズの「恋はあせらず」(他にはデュランデュラン「プリーズ・テル・ミー・ナウ」、カルチャー・クラブ「カーマは気まぐれ」、カジャグーグー「君はTOO SHY」、ザ・キュアー「ラヴキャッツ」などを収録)であった。

この年はマイケル・ジャクソン「スリラー」とデュラン・デュランやカルチャー・クラブをはじめとする第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン勢がヒットチャートを席巻したような印象があるのだが、1960年代の第1次ブリティッシュ・インヴェイジョンでビートルズ、ローリング・ストーンズなどと共に活躍したホリーズがシュープリームズの「ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ」をカバーしてヒット・チャートにカムバックするということもあった。他にもビリー・ジョエル「あの娘にアタック」がモータウンビートを取り入れ、歌詞においても恋に悩む若者にアドバイスをするという「恋はあせらず」にインスパイアされたとも思える内容であった。思えばこの前の年の秋に全米シングル・チャートで1位に輝いたダリル・ホール&ジョン・オーツ「マンイーター」もモータウン・ビートを取り入れていたし、日本ではサザンオールスターズの原由子がリリースしてオリコン週間シングルランキングで最高5位を記録したソロシングル「恋は、ご多忙申し上げます」がそんな感じだったりと、なぜかモータウンがリバイバルしがちな傾向があった。

この翌年の1984年はモータウン設立25周年で、「モータウン25NO.1ヒッツ」というコンピレーション・アルバムがリリースされた。マーヴェレッツ「プリーズ・ミスター・ポストマン」からダイアナ・ロス&ライオネル・リッチー「エンドレス・ラヴ」まで、モータウンからリリースされたNO.1ヒットソングが25曲収録されているという、入門編としてはなかなか便利なアルバムであった。さらに翌年、高校を卒業して東京で一人暮らしをはじめていた私は池袋のビックカメラで人生初のウォークマンを買うわけだが、何かカセットテープを買おうと思い、西武百貨店のディスクポートで選んだのがこのコンピレーションであった。A面の5曲目にシュープリームスの「恋はあせらず」も収録されていて、これで初めて手に入れることができた。

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1960sClassic Songs