2002年の邦楽ポップス名曲ベスト20

2002年にリリースされた邦楽ポップスからこれは名曲なのではないかと思える20曲を挙げていきたい。

ちなみに2002年は平成17年で、新語・流行語大賞の年間大賞は多摩川に現れたアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」と日本と韓国で共同開催されたFIFAワールドカップの略称「W杯」であった。

20. Happy Valley – orange pekoe

関西学院大学出身の2人組ユニット、orange pekoeのメジャーデビューシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高22位を記録した。

懐かしの「渋谷系」を思わせるジャズやラテン音楽の影響を受けたJ-POPでFM各局のヘヴィーローテーションにも多数選ばれた。

この曲も収録したデビューアルバム「Organic Plastic Music」はオリコン週間アルバムランキングで最高5位を記録し、日本ゴールドディスク大賞ではニュー・アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれたりもした。

19. 裸の王様 – LOVE PSYCHEDELICO

LOVE PSYCHEDELICOの6枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高14位を記録した。

青山学院大学の音楽サークル出身の2人組ユニットで、70年代の洋楽ロックを感じさせる音楽性でありながら、デビューアルバムから2作続けてオリコン週間アルバムランキングで1位に輝くなど、とても人気があった。

この曲でもまたセンスの良さが光っているわけだが、「ステージは裸の王様たちのメッセージ」などと皮肉が効いているところもとても良い。

18. 眠れぬ夜は君のせい – MISIA

MISIAの10枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングにおいては「Everything」に続き自身2曲目となる1位に輝いている。テレビドラマ「恋愛偏差値」の主題歌にも起用された。

90年代後半のデビュー以降、J-POPのR&B化やディーバ系なるサブジャンルの確立においてひじょうに重要な役割を果たしたMISIAの代表曲の1つともいえる、素晴らしいバラードである。

17. 二人のアカボシ – キンモクセイ

相模原市出身のバンド、キンモクセイの2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高10位を記録した。

この当時のJ-POPではほとんど忘れ去られていたシティポップ的な楽曲というのが、懐かしくも新しかったのだが、これが意外にもヒットした上に「NHK紅白歌合戦」にも出場してしまった。

「アカボシ」は「明星」といことなのか、ジャケットは明星食品のインスタントラーメン「チャルメラ」のパッケージをモチーフにしていて、ミュージックビデオにおいてもラーメンの屋台が登場する。

まったくの余談だがこれ以前に明星「チャルメラ」のパッケージをイメージさせるCDジャケットとしては、「三宅裕司のいかすバンド天国」でイカ天キングに輝いた宮尾すすむと日本の社長のアルバム「大車輪」が挙げられる。

16. くちばしにチェリー – EGO-WRAPPIN’

EGO-WRAPPIN’の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高9位を記録した。

テレビドラマ「私立探偵 濱マイク」の主題歌でもあり、「渋谷系」的な感性の残り香のようなものも感じられる、マイルドにジャジーでブルージーなところが受けていたように思える。

15. ナツノヒカリ – GRAPEVINE

GRAPEVINEの12枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高16位を記録した。

「ロッキングオンJAPAN」の平均的な読者層にひじょうに人気があるバンドという印象があったが、この曲は夏という季節に根拠もなくいだきがちなイリュージョンと、それに対するマイルドな失望が美しく描写された素晴らしいサマーソングで、あるタイプの人々には明らかに刺さりまくる。

「君を抱きしめてなかった」し「君の髪に触れなかった」が、「他に何もいらなかった」季節に共感を覚えるすべての人々のアンセムとなりうる超名曲である。

GRAPEVINEの代表曲といえば他にいくつもあって、この曲が挙げられることはほとんどないと思われるのだが、オリコン週間シングルランキングでの最高位が最も高いのは実はこれである。

14. 童貞ソー・ヤング – GOING STEADY

GOING STEADYの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。

銀杏BOYZの峯田和伸がかつて組んでいたパンクバンドという説明がナウなヤングには必要なのかどうかは定かではないが、この当時は青春パンクとでも呼ぶべきタイプの音楽がひじょうに流行っていて、GOING STEADYもまたそこにカテゴライズされていたような気がする。

ポップでキャッチーなメロディーと、ヒリヒリするような青春感がたまらなく、かつてそのような時代を通り過ぎた大人にとっても、かさぶた剥がし的な快感がある。

13. GT (Gran Turismo) – クレイジーケンバンド

クレイジーケンバンドの4枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高57位を記録した。

1960年生まれの横山剣が率いるロックバンドで、昭和歌謡的なエッセンスをアップデートしたかのような新感覚のJ-POPでカルト的な人気を得ていた。

12. Bloomin’ – Tommy february6

the brilliant greenの川瀬智子によるソロプロジェクト、Tommy february6の3枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高10位を記録した。

80年代のシンセポップから影響を受けたサウンドは当時としてはなかなか新鮮であり、この曲においてはさらにユーロポップ的なテイストも入っていてとても良い。

資生堂化粧品の春のCMにも使われていたが、全体的に程よい軽さというかマイルドなナメている感に個人的にはとても好感をいだいていた。

11. 地球ブルース~337~ – KICK THE CAN CREW

KICK THE CAN CREWの9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高13位を記録した。

ヒップホップがいよいよJ-POPにおいてもメインストリーム化し、特に人気があるグループの1つがKICK THE CAN CREWであった。

この曲はもちろんヒップホップではあるのだが、どこかエキゾチックな旋律や日本人の感性に深く刻まれている三三七拍子が取り上げられている点などがひじょうにユニークである。

さらには飲み会的なものへの誘いに対してのアンビバレンツな思いや、宴会ソング的な要素もあったりとひじょうに興味深い楽曲となっている。

10. Do It! Now – モーニング娘。

モーニング娘。の15枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した。

この年のハロー!プロジェクト関連では、松浦亜弥「Yeah!めっちゃホリデイ」、藤本美貴「ロマンティック 浮かれモード」、メロン記念日「香水」といった名曲の数々もリリースされていた。

後藤真希が参加した最後のシングルとなったこの曲においては、打ち込みの導入とメインストリームのアイドルポップスもヒップホップを取り入れるようになってきた、という点が特徴的である。

新しい夢に向かっていく若者の希望だけではなく不安をも描いている内容に、「原宿」という固有名詞が急に出てくる辺りもとても良い。

9. CRESCENT MOON – 中島美嘉

中島美嘉の2枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。

2001年に女優であり歌手としてデビューして、この年にはデビューアルバム「TRUE」がオリコン週間アルバムランキングが1位に輝いたり、「NHK紅白歌合戦」に初出場するなど一気にメジャー化していくことになる。

5枚目のシングルでオリコン週間シングルランキングで最高3位を記録した「WILL」のようなバラードでより真価を発揮し、一般的にもそちらのイメージの方が強いとも思われるが、アップテンポなこの曲においては美しいストリングスや、松本隆による「私の中の猫は鋭い爪かくしてじゃれる」「あなたのたよりないとこ かばってあげたい」といったフレーズを歌う力強くも繊細なボーカルが素晴らしい。

8. 代官山エレジー – KIRINJI

KIRINJIの堀込高樹が吉本興業のコメディアン、藤井隆に提供した曲だが、セルフカバーバージョンはコンピレーションアルバム「OMNIBUS」に収録された。

藤井隆のデビューアルバム「ロミオ道行」に収録された他の曲と同じく、この曲も松本隆が作詞している。

恋人との別れ際にあたっての男の強がりが致死量レベルの切なさで描かれた歌詞に、KIRINJIのネオシティポップ的なサウンドが絶妙にマッチしている。

「ぼくは死ぬ日まで君を忘れない 電話のメモリーは消しても」にあらわれる、ロマンティシズムとダンディズムが混じり合った感じがとても良い。

7. 東京 – 桑田佳祐

桑田佳祐のソロとしては8枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

人生のどうしようもなさや、それでも不承不承やり続けていかなければいけない感じなどがポップミュージックというフォーマットにおいてリアルに描写された、こういうのこそが大人のロックなのではないかとも思える楽曲である。

桑田佳祐がタクシー運転手に扮し、ドラマ仕立てでもあるミュージックビデオも見ごたえがある。

6. キャノンボール – 中村一義

中村一義の13枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高18位を記録した。

「僕は死ぬように生きていたくはない」というフレーズにすべては凝縮されているようでもある、生命力に溢れたロックチューンである。

銀座のどこかのビルの屋上で撮影されたと思われるミュージックビデオもカッコいい。

5. 楽園ベイベー – RIP SLYME

RIP SLYMEの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高2位を記録した。

ヒップホップグループによる楽曲でありながら、この夏を代表する大衆歌謡的なヒット曲でもあったように思える。特にCDを買ったり熱心に聴いてはいなかったとしても、ふと耳にしただけであの夏の気分がよみがえるといったタイプの曲のうちの1つでもある。

この曲を収録したアルバム「TOKYO CLASSIC」は日本のヒップホップとしては初のミリオンセラーを記録し、購入者特典ではあったものの、日本武道館公演を実現している。

4. 光 – 宇多田ヒカル

宇多田ヒカルの10枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。

人気ゲームソフト「キングダムハーツ」のエンディングテーマとしても知られ、本名の「光」がタイトルになったこの曲は、宇多田ヒカル自身にとってもひじょうに重要な楽曲だと語られている。

孤独を受け入れていた日常において、突然に差し込んだ「光」について歌われているようにも感じられる。

キッチンで食器を洗い続ける宇多田ヒカルを1ショットで映し続けるミュージックビデオも、ひじょうに印象的である。

3. 美しく燃える森 – 東京スカパラダイスオーケストラ

東京スカパラダイスオーケストラの22枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高4位を記録した。

日本屈指のスカバンドとして80年代から活動を続ける通称「スカパラ」が、歌モノシングル3部作の第3弾として、「めくれたオレンジ」での田島貴男(Original Love)、「カナリヤ鳴く空」でのチバユウスケ(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)に続いて、奥田民生をボーカリストに迎えてリリースした。

これらを収録したアルバム「Stompin’ On DOWN BEAT ALLEY」は、オリコン週間アルバムランキングでバンドにとって初の1位に輝いた。

2. マルシェ – KICK THE CAN CREW

KICK THE CAN CREWの5枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高9位を記録した。

ラテン系のノリも感じさせながら日本のパーティーラップらしくもなっている、アップリフティングな楽曲である。

タイトルはハウス「カレーマルシェ」から取っているという軽さもとても良い。この曲で「NHK紅白歌合戦」にも出場した。

1 WORLD’S END SUPERNOVA – くるり

くるりの9枚目のシングルで、オリコン週間シングルランキングで最高13位を記録した。

オルタナティヴロックにダンスミュージックの要素を取り入れ、それがひじょうにハマっているという、日本のロックバンドとしては実にエポックメイキングな楽曲である。

中心メンバーの岸田繁によって監督されたミュージックビデオにも、音楽性同様に実験性とポップさが同居していてとても良い。