XTCの曲ベスト10

11月11日はモーニング娘。の6期メンバー、田中れいなだけではなく、XTCのアンディ・パートリッジが生まれた日でもあるので、XTCの曲で重要だと思われる10曲を選んでいく回にしていきたい。

10. The Ballad Of Peter Pumpkinhead (1992)

XTCはイギリスのバンドだが、日本の音楽ファンにひじょうに人気があるような印象がある。この曲が収録されたアルバム「ノンサッチ」がリリースされた1992年の時点で、XTCはイギリスのポップ・シーン最前線とはほとんど接点がなかったように思えるのだが、「ミュージック・マガジン」などではひじょうに大きく取り上げられていたような記憶がある。個人的には設定上、そういっった状況に対してカウンター的な立場を取ってはいたのだが、こっそり買って聴いてはいたし、基本的に好きなタイプの音楽ではあった。

この曲はアルバムの1曲目に収録され、ビーチ・ボーイズからの影響が感じられる「ザ・ディサポインテッド」の次にリリースされた。フォーク・ロック的なフィーリングがあるのが特徴的である。

9. Towers Of London (1980)

1980年のアルバム「ブラック・シー」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高31位を記録した。XTCの音楽の特徴として、ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ的なサウンドとビートルズなどの60年代ポップス的なメロディーが融合しているようなものもある、というのがあると思うのだが、この曲は無意識的にビートルズの「レイン」をリライトしようとしてできたのではないかと、アンディ・パートリッジは後に語っているようだ。

ジョン・レノンが亡くなった翌日にXTCはリバプールでライブを行ったが、追悼の意味を込めてこの曲と「レイン」を演奏していたようだ。

8. The Mayor Of Simpleton (1989)

1989年のアルバム「オレンジズ・アンド・レモンズ」からの最初のシングルで、この頃になると初期のポスト・パンクでニュー・ウェイヴな感じはかなり薄れているのだが、アメリカのカレッジ・ラジオではひじょうに受けていたらしく、オルタナティヴ・エアプレイ・チャートで1位に輝いたりもしている。エルヴィス・コステロ「ヴェロニカ」などと同じぐらいの時期に、MTVなどでビデオをよく見た記憶がある。

7. This Is Pop? (1978)

1978年のデビュー・アルバム「ホワイト・ミュージック」の収録曲で、後に再録音したバージョンがシングルとしてリリースされるが、全英シングル・チャートにはランクインしていない。パンクでもニュー・ウェイヴでもなく、ニュー・ポップなのだと、アンディ・パートリッジはXTCの音楽について当時、語っていたようなのだが、タイトルにはそれがあらわれているように思える。オープニングのコードは、ビートルズ「ア・ハード・デイズ・ナイト」に影響されているとのこと。

6. Dear God (1986)

XTCは80年代の途中からライブをやらなくなったことなどもあり、評価が高いわりにセールス的には苦戦を強いられることになった。レーベルは音楽性があまりにもイギリス的すぎるのが良くないのではないかと考え、アメリカ人のプロデューサーを立てることを提案する。トッド・ラングレンに決まり、レコーディングがはじまるのだが意見が対立し、いろいろ大変だった末に完成したのがアルバム「スカイラーキング」である。全英アルバム・チャートでの最高位は90位とこれもセールス的になかなかしんどいのだが、バロック・ポップ的な内容が高く評価されたり、新たなファンを開拓したりはした。

シングル・カットされた「グラス」のB面にこの曲が収録されていたのだが、アメリカのカレッジ・ラジオでヒットして、「スカイラーキング」にも後に追加収録された。神に宛てて書かれた手紙という体裁を取っているのだが、信仰を否定しているように取れる箇所などもあり、熱心なキリスト教信者からラジオ局が脅迫されるなどもしたが、ミュージック・ビデオも含め、高く評価されていた。

5. Generals And Majors (1980)

アンディ・パートリッジではなくベーシストのコリン・モールディングによって書かれた曲で、全英シングル・チャートで最高32位を記録した。英国的でありながら軽快なメロディーに乗せて、戦争についてパロディー的に歌われているように感じられる。アルバム「ブラック・シー」から、最初のシングルである。

4. Life Begins At The Hop (1979)

これもまたコリン・モールディングによって書かれていて、XTCの曲では初めて全米シングル・チャートにランクインした。最高位は54位であった。アンディ・パートリッジに比べ、書いた曲数は少ないのだが、ヒット率はわりと高いような気がする。過剰にひねりすぎず、ポップでキャッチーなところが良いのかもしれない。この曲にもそれはあらわれていて、内容はそれほど濃くはないのだがポップ・ソングとしての強度はかなりのものである。

3. Senses Working Overtime (1982)

アルバム「イングリッシュ・セツルメント」から最初のシングル・カットで、全英シングル・チャートで最高10位と、XTCにとって最大のヒット曲となった。この曲はアンディ・パートリッジによって書かれているが、マンフレッド・マンの「5-4-3-2-1」がベースになっている。

2. Making Plans For Nigel (1979)

スティーヴ・リリーホワイトがプロデュースし、サウンドにメジャー感が増したアルバム「ドラムズ・アンド・ワイアーズ」から最初のシングルで、全英シングル・チャートで最高17位を記録した。ナイジェルという息子の将来に自分たちの理想をあてはめる両親について歌われていて、コリン・モールディングによる楽曲である。おそらくXTCで最もポピュラーな曲なのではないかと思われ、日本のロック・バンド、Base Ball Bearがライブの出囃子に使っていたことなども思い出される。

1. Respectable Street (1980)

アルバム「ブラック・シー」の1曲目に収録され、シングル・カットはされたが全英シングル・チャートにランクインはしていない。歌詞に堕胎とソニー・エンターテインメント・センターが取り上げられていたことによって、BBCが放送禁止にしたことも影響したのかもしれない。アンディ・パートリッジはブラーの1993年のアルバム「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」を当初はプロデュースすることになっていたのだが、途中でメンバーとの意見の対立が起こり、解任されるということがあった。完成したアルバムはデフォルメしたイギリスらしさのようなものをコンセプトにしたようなユニークな作品で、バンドの評価を高めたのと同時に、ブリットポップの隆盛においてもひじょうに重要な役割を果たしたともいえる。

ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ的なサウンドと英国的なメロディーの融合という側面が90年代のブリットポップにはあったと思われるのだが、この曲などは参照点としてひじょうに重要なのではないかというような気がしないでもない。イギリスのローカルネタ的な印象が強い歌詞もまた、ブリットポップ的であったりもする。