ラヴソングの名曲ベスト30 Pt.3 (10-1)
10. (Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher – Jackie Wilson (1967)
チェス・レコードのソングライター、カール・スミスとレイナード・マイナーによって書かれ、ザ・デルズがレコーディングしたがリリースされていなかった曲をまた別のソングライターであるゲイリー・ジャクソンが手直ししたものをジャッキー・ウィルソンが歌い、全米シングル・チャートで最高6位のヒットを記録した。
レコーディングにはモータウンのセッションミュージシャンやシンガーが多数参加し、君の愛は僕の気分をとても良くしてくれる、というような曲の内容にマッチしたアップリフティングなサウンドを実現している。アース・ウィンド・アンド・ファイアーの中心メンバーとして後に活躍するモーリス・ホワイトも、ドラマーとして参加している。
リタ・クーリッジによるよりスローテンポなカバーバージョンが1977年にリリースされ、全米シングル・チャートの2位まで上がったが、エモーションズ「ベスト・オブ・マイ・ラヴ」に阻まれ1位には届かなかった。イギリスでは1987年にリバイバルヒットし、全英シングル・チャートで最高15位を記録した(1969年に記録した11位が最高記録である)。
9. You Can’t Hurry Love – The Supremes (1966)
「恋はあせらず」の邦題で知られるシュープリームスの代表曲の1つで、1966年の秋に全米シングル・チャートの1位に輝いている。
ホーランド=ドジャー=ホーランドによる、いわゆるモータウンサウンドの典型例のような楽曲で、ボーカルも演奏もひじょうに充実している。タイトルや歌詞の一部は50年代のゴスペルソング「(ユー・キャント・ハリー・ゴッド)ヒーズ・ライト・オン・タイム」にインスパイアされたものである。
恋は長きにわたるギブ&テイクのゲームなのだから、本物の愛を手に入れるならあせってはいけない、というような母から娘へのアドバイスについて歌われている。80年代にはフィル・コリンズによるカバーバージョンが全英シングル・チャートで1位に輝いている。
8. At Last – Etta James (1960)
1941年のミュージカル映画「銀嶺セレナーデ」のために書かれ、グレン・ミラー楽団が演奏したり、様々なアーティストが歌ったりしていたが、1960年にリリースされたエタ・ジイムズのバージョンが有名である。
ついに恋人ができて寂しい日々は終わったというようなことが歌われているこの曲は当時の全米シングル・チャートで最高47位を記録しているのだが、スタンダードナンバーとしてひじょうに有名であり、映画「ドリームガール」でのビヨンセをはじめ、今日に至るまで様々なアーティストによってカバーされている。エタ・ジェイムズが73歳で亡くなった2012年には、葬儀でクリスティーナ・アギレラがこの曲を歌っていた。
7. Maps – Yeah Yeah Yeahs (2003)
ヤー・ヤー・ヤーズのデビューアルバム「フィーヴァー・トゥ・テル」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高26位を記録した。
ボーカリストのカレン・Oと交際相手であったライアーズのアンガス・アンドリューとの関係について歌われたエモーショナルなラヴソングであり、00年代オルタナティヴロックの名曲としての評価も定着している。
タイトルの「Maps」は「私のアンガス、お願いそばにいて」を意味する「My Angus Please Stay」の略である。ミュージックビデオでカレン・Oは歌いながら涙を流しているのだが、これはバンドがツアーに出かける直前に行われたビデオ撮影の場所に恋人が現れるはずだったのだが遅れてしまい、しばらく会えなくなるかもしれないと思っていた時に突然現れたことによって心が乱され、本当に泣いてしまったものである。
6. My Girl – The Temptations (1964)
イントロで聴くことができるベースのフレーズの時点ですでにあまりにも有名なスタンダードナンバーで、全米シングル・チャートで1位に輝いた。スモーキー・ロビンソンとザ・ミラクルズのメンバーであったロナルド・ホワイトによって書かれたラヴソングで、モデルとなっているのはスモーキー・ロビンソンの妻、クローデット・ロジャース・ロビンソンである。
テンプテーションズのメインのボーカリストではなかったデヴィッド・ラフィンの才能を見いだしたスモーキー・ロビンソンがリードボーカル曲として書いた楽曲であり、これがテンプテーションズにとって初の全米NO.1ヒットになった。
イギリスではリリース当時の全英シングル・チャートでの最高位が43位と思ったほど売れていなかったのだが、90年代にマコーレー・カルキンが出演した映画「マイ・ガール」で使われるとリバイバルヒットとなり、全英シングル・チャートで最高2位を記録している。
5. Something – The Beatles (1969)
ビートルズのアルバム「アビイ・ロード」に収録されたジョージ・ハリソンの曲で、全米シングル・チャートでは「カム・トゥゲザー」との両A面シングルとして1位に輝いている。
妻のパティ・ボイドに捧げた曲であるというのが一般的な解釈だが、過去にはより広義における愛がテーマになっているともいわれていたり、レイ・チャールズにインスパイアされたりもしている。
ビートルズの楽曲の中では、「イエスタデイ」に次いで2番目に多くカバーされている人気曲である。
4. Be My Baby – The Ronettes (1963)
フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」と呼ばれる技法を用いた臨場感あふれるサウンドと、ロニー・スペクターのパワフルなボーカルが特徴的な、ポップミュージック史に残る完璧なポップソングでありラヴソングのうちの1つである。全米シングル・チャートでは最高2位を記録した。
私の恋人になって、というシンプルかつプリミティヴな感情がフルパワーで爆発しているかのような、これぞティーンポップというべき楽曲でもあり、ドライブデート中にカーラジオでこの曲を聴いたブライアン・ウィルソンが衝撃のあまり思わず車を停めたのも納得というものである。
3. God Only Knows – The Beach Boys (1966)
ポップミュージック史上最も優れたアルバムだとされる場合も少なくないビーチ・ボーイズ「ペット・サウンズ」に収録されたラヴソングで、「神のみぞ知る」の邦題で知られる。シングルとしては「素敵じゃないか」のB面としてカットされ、全米シングル・チャートで最高39位を記録した。
よく知らないのだが、「渋谷系」界隈では「ドルフィン・ソング」案件でもよく知られる曲である。
「ほんとのこと知りたいだけなのに 夏休みはもう終わり」ではなく、君のことをいつも愛しているわけではないかもしれないが、もしも君がいないとしたら僕がどうなってしまうかなんていうことは神のみぞ知る、つまりまったく分からないというようなことが歌われている。
2. I Say A Little Prayer – Aretha Franklin (1968)
ハル・デヴィッドとバート・バカラックのコンビがディオンヌ・ワーウィックに提供し、全米シングル・チャートで最高4位を記録した「小さな願い」の邦題でも知られる曲を、アレサ・フランクリンがカバーしたバージョンである。
日常的な不安に苛まれながら続いていく生活において、愛する人がどうか無事でありますようにと小さな願いを捧げるような気分はわりとリアルな昨今でもあり、この曲のエバーグリーンな名曲としての価値が再認識できる。全米シングル・チャートで最高10位、全英シングル・チャートでは最高4位を記録している。
1. Let’s Stay Together – Al Green (1971)
間違いなくポップミュージック史上最高のボーカリストの1人であろうアル・グリーンの最も有名な曲であり、全米シングル・チャートで1位に輝いている。
愛を語るには様々な美辞麗句もまた乙なものではあるのだが、一緒にいたいという気持ちこそがベーシックにリアルなのではないだろうか。それで、この曲においては良い時も悪い時もハッピーでも悲しくても、とまで歌われているのでこの時点では本気だということが分かる。
1994年の映画「パルプ・フィクション」のサウンドトラックで使われ、新しい世代のファンも獲得したこの曲は表面的にクールでゴージャスな気分にさせながら、本質的にわりとちゃんとしたことを歌っているところも尊いと感じさせる。