ラヴソングの名曲ベスト30 Pt.1 (30-21)

すべてのポップソングのうちラヴソングの割合というのは一体どれぐらいなのだろうか、また、そもそも何をしてラヴソングとするべきなのか、というようなことは特に真剣に考えてはいないのだが、今回はおそらくラヴソングなのではないかと思えるポップソングの中から、これは名曲なのではないかという30曲を適当にカウントダウンしていきたい。

30. Take My Breath Away – Berlin (1986)

ベルリンという名前なのだが、アメリカのバンドである。映画「トップガン」のサウンドトラックからシングルカットされ、ケニー・ロギンス「デンジャー・ゾーン」に続いて全米シングル・チャートなどの1位に輝いた。プロデュースしているのは、ジョルジオ・モロダーである。

「トップ・ガン」で主演のトム・クルーズが着ていたフライトジャケットが大いに流行り、実際に映画では着られていなかったものの、MA-1というフライトジャケットがものすごく売れた。青山学院大学厚木キャンパスから神奈川中央交通バスの乗り場まで行く間、横に広がってゆっくり歩く6~7人ぐらいの男子学生たちはそれぞれ背丈や体型が異なっていたのだが、全員がMA-1のフライトジャケットとリーバイスのブルージーンズを履いているというファッションヴィクテムぶりを見せていて、頭がクラクラしてとても良かった。

この曲はイントロからしてシンセサイザー音にインパクトがあり、新宿歌舞伎町の東亜会館のディスコでチークタイムにかかっているのを聴いたことがあるように、俗っぽいところが当時はまったくハマらなかったのだが、いまではかなりのお気に入りである。「愛は吐息のように」という邦題もとても良い。

29. Eternal Flame – The Bangles (1988)

バングルスの4作目のアルバム「エブリシング」からの先行シングル「イン・ユア・ルーム」はわりと好きだったのだが、次にシングルカットされたこの曲が全英シングル・チャートで1位の大ヒットを記録してしまったため、すっかり影が薄くなってしまった。

初期にはもっとインディー・ロック的な音楽をやっていたりもしたバングルスだが、この曲はパワー・バラード的なものになっている。スザンナ・ホフスのユニークなボーカルが、実はこういったタイプの曲にもハマるのだと気づくことができたりもした。邦題は「胸いっぱいの愛」である。

28. By Your Side – Sade (2000)

シャーデーというとデビューアルバム「ダイアモンド・ライフをはじめ、80年代の作品の印象がひじょうに強いのだが、2000年に約8年ぶりのアルバムとしてリリースされた「ラヴァーズ・ロック」からの先行シングルであるこの曲も人気が高い。

永遠に続く愛という現実的には存在することがひじょうに難しいのだがそれゆえに様々な作品のテーマにもされがちな概念がこの曲においても扱われているのだが、サウンドがよりライトでリラックスした感じになっているのに対し、ボーカルはスモーキーでありながら力強さも感じさせる。この曲でグラミー賞にもノミネートされ、2017年にはThe 1975によるカバーバージョンがチャリティーシングルとしてリリースされている。

27. Crazy For You – Madonna (1985)

マドンナのシングルはデビュー以来、ダンスポップ的なものばかりだったのだが、「ライク・ア・ヴァージン」「マテリアル・ガール」の連続大ヒットによりポップアイコン化している最中に映画「ビジョン・クエスト/青春の賭け」のサウンドトラックからシングルカットされたのがこの曲であり、バラードとしては初のシングルにして全米シングル・チャートで1位に輝いた。これによってマドンナはバラードもいけるということが一般的に認知されたという意味でも重要な曲であり、80年代的なサウンドプロダクションと初期マドンナのボーカルにグッとくる。

26. You Make My Dreams – Daryl Hall & John Oates (1980)

ダリル・ホール&ジョン・オーツのアルバム「モダン・ヴォイス」から「ハウ・ダズ・イット・フィール」「ふられた気持」、全米NO.1ヒットになった「キッス・オン・マイ・リスト」に続いてシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高5位のヒットを記録した曲である。

この後に次のアルバム「プライベート・アイズ」からのシングル「プライベート・アイズ」「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」が2曲連続で全米NO.1ヒットになったこともあり、この曲のインパクトはわりと弱くもあったのだが、2009年の映画「(500)日のサマー」で効果的に使われてから、ホール&オーツでラヴソングといえばこれなのではないかというような印象に変わっていった。

25. The Way You Make Me Feel – Michael Jackson (1987)

マイケル・ジャクソンのアルバム「BAD」からシングルカットされ、「アイ・ジャスト・キャント・ストップ・ラヴィング・ユー」「BAD」に続いて、全米シングル・チャートで3曲連続1位に輝いた曲である。恋を予感させるグルーヴィーな気分が、80年代的なシンセサウンドとマイケル・ジャクソンのご機嫌なボーカルによって表現されていてとても良い。

24. Crazy – Patsy Cline (1961)

ウィリー・ネルソンによって書かれた楽曲をパッツィー・クラインが歌い、全米カントリー・チャートで最高2位を記録した。アメリカのジュークボックスで歴代最も再生された楽曲だともされているようだ。

この曲は当初、「クレイジー」ではなく「スチューピッド」というタイトルで書かれていたわけだが、恋愛というものがひじょうに愚かでくだらないものであったとしても、かつて日本の文豪も書いていたように、人生にはこれ以外に花はない。ゆえに過度ではないかとも思えるレベルでの不安や後悔をともなったりもするのだが、その辺りがヴィヴィッドに表現されているゆえに、広く共感されたのではないかと思われる。

23. Time After Time – Cyndi Lauper (1983)

シンディ・ローパーのデビューアルバム「シーズ・ソー・アンユージュアル」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで1位に輝いた。

「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」という元気いっぱいのポップソングでブレイクした後にこのバラードというところにインパクトを感じてもいたのだが、実はレーベルは先にこの曲の方をシングルとしてリリースしたかったようだ。この曲が先に世に出てしまうことによってバラード歌手のイメージが定着してしまうことを嫌ったシンディ・ローパーの希望で「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」がシングルカットされたということだが、この選択は成功だったように思われる。

アルバム収録曲の中では最後にレコーディングされた曲であり、フーターズのロブ・ハイマンが共作し、バッキングボーカルでも参加している。曲の内容にはシンディ・ローパーとロブ・ハイマン、それぞれの恋愛における実体験が反映されている。

22. I’ll Stand By You – Pretenders (1994)

プリテンダーズのアルバム「ラスト・オブ・インディペンデンツ」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高10位を記録したほか、アメリカ、オーストラリアなど様々な国々でヒットした。

ニュー・ウェイヴ時代と比べ、クリッシー・ハインドのボーカルには温かみが感じられ、その個性は保持しながらもアンセミックともいえるバラードにもマッチしている。様々なアーティストによってカバーされているが、中でもガールズ・アラウドによるバージョンはチャリティーシングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで1位に輝いている。

21. Friday I’m In Love – The Cure (1992)

ザ・キュアーのアルバム「ウィッシュ」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高6位のヒットを記録した。

ダークでゴシック的なイメージが強いザ・キュアーによるポップでキャッチーなラヴソングとしては、「ジャスト・ライク・ヘヴン」と並んでひじょうに人気がある。月曜から木曜まではさえない日々だが、金曜日には恋をしているというような内容が共感を呼ぶ。

1992年当時のインディー・ディスコ的な気分を、思い起こさせるような楽曲でもある。