1997年の名盤アルバムベスト20(10-1)

10. Dig Your Own Hole – The Chemical Brothers

ケミカル・ブラザーズの2作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで1位に輝いた。オアシスのノエル・ギャラガーをゲストに迎えた「セッティング・サン」、ビッグビートというサブジャンルを象徴するかのような「ブロック・ロッキン・ビーツ」と2曲の全英NO.1ヒットを収録しているが、他にもタイトル通りにサイケデリックな「ザ・プライヴェート・サイケデリック・リール」など、アルバム全体がバラエティーにとんでいる。

9. Songs From Northern Britain – Teenage Fanclub

ティーンエイジ・ファンクラブの6作目のアルバムで、全英アルバム・チャートではバンドのキャリア中で最も高い3位を記録している。タイトルは出身地であるスコットランドにちなんでいて、ジャケットアートワークにもそれはあらわれている。よりナチュラルでオーガニックになったサウンドはやや地味なようにも感じられるが、ソングライティングも演奏もひじょうに充実している。

8. Homework – Daft Punk

フランスのエレクトロニック・ミュージックユニット、ダフト・パンクのデビューアルバムで、全英アルバム・チャートで最高8位を記録した。懐かしのディスコ・ミュージックと未来的なエレクトリック・ミュージックを絶妙にミックスしたような音楽性が実にユニークで、新しもの好きのポップミュージックファンを夢中にさせた。

7. Either/Or – Elliott Smith

アメリカはオレゴン州ポートランド出身のシンガー・ソングライターで、ヒートマイザーというバンドでかつては活動していたエリオット・スミスの3作目のアルバムである。アルバム・チャートにはランクインしていないが、批評家や音楽ファンから高く評価され、モダンクラシックとして後に認知されるようになる。映画監督のガス・ヴァン・ザントがこのアルバムをとても気に入り、「ビトウィーン・ザ・バーズ」をはじめとする3曲と新曲の「ミス・ミズリー」を「グッド・ウィル・ハンティング」のサウンドトラックに使った。

6. Blur – Blur

ブラー5作目のアルバムで、全英アルバム・チャートでは1994年の「パークライフ」から3作連続となる1位に輝いた。すでに勢いが落ち着きはじめていたブリットポップから離れ、アメリカのオルタナティヴ・ロックからの影響を取り入れた音楽性は天性のポップ感覚とも相まって、ひじょうにユニークなインディーロックを実現している。全英シングル・チャートで1位に輝いた「ビートルバム」や、最高2位のインディー・ロックアンセム「ソング2」などを収録している。

5. When I Was Born For The 7th Time – Cornershop

インド系イギリス人のティジンダー・シンを中心メンバーとするインディー・ロックバンド、コーナーショップの3作目のアルバムで、全英アルバム・チャートでは最高17位を記録した。インド音楽の要素も取り入れたユニークな音楽性が特徴で、「ブリムフル・オブ・アーシャ」はファットボーイ・スリムによるリミックスバージョンがこの翌年に全英シングル・チャートの1位に輝いた。

4. Radiator – Super Furry Animals

スーパー・ファーリー・アニマルズの2作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで最高8位を記録した。クリエイション・レコーズからリリースされる作品はこの頃になると玉石混交の印象もひじょうに強くなってはいたのだが、それでもとても良いものが少なくはなく、このアルバムなどは特に充実していた。インディーポップにおける様々なパターンが実験されていて、そのほとんどがことごとく成功している。

3. Urban Hymns – The Verve

ザ・ヴァーヴの3作目のアルバムで、全英アルバム・チャートではバンドにとって初の1位に輝いた。1995年に一旦は解散してから、それほど間を空けずに再結成したのだが、アンセミックなシングル「ビター・スウィート・シンフォニー」が全英シングル・チャートで最高2位、次の「ドラッグス・ドント・ワーク」はダイアナ元皇太子妃の訃報にふれて悲嘆にくれるイギリス国民の心情に寄り添ったともいわれ、初の1位を記録することになった。辛うじてブリットポップに分類されてもいたのだが、狂騒的なムードはすでに過ぎ去り、よりシリアスな表現が求められてもいた。本来の持ち味であるサイケデリック・ロック的な楽曲も充実している。

2. Ladies And Gentlemen We Are Floating In Space – Spiritualized

スピリチュアライズドはサイケデリックなインディー・ロックをやっていたスペースメン3のメンバーであったジェイソン・ピアースらによって結成されたバンドで、「宇宙遊泳」の邦題でも知られるこのアルバムは通算3作目となる。ドラッグの影響を強く受けていることは明白であり、初回盤のCDは薬のパッケージを模した紙の箱に入れられ、中身のディスクも薬的な仕様のパッケージに収められていた。服用する音楽という感じでもあったこのアルバムの内容には合っていたと思うのだが、入れたり出したりするのが面倒で、後に通常のプラスチックのケースに入ったCDも買った記憶がある。本来ならばカルトクラシック的な作品に相応しいのだが、全英アルバム・チャートで最高4位とちゃんと売れてもいたのであった。

1. OK Computer – Radiohead

レディオヘッドの3作目のアルバムで、全英アルバム・チャートで1位に輝いたばかりか、歴代ベストアルバム的なリストにおいて、90年代のアルバムとしてはニルヴァーナ「ネヴァーマインド」と並んで上位にランクインしがちなほど高く評価されている。

デビューアルバムの「パブロ・ハニー」からその次の「ザ・ベンズ」、さらにこの「OKコンピューター」と、アルバム1作ごとの進化の度合いがなかなかいかついことになっている。カート・コバーン、トム・ヨーク、碇シンジの時代が90年代かというとそうでもないのだが、都市生活者の孤独がテクノロジーの発達によって、全世界的な疎外感にもつながりがちというマイルドに悲しい予感をトレースしていたようにも感じられる。プログレッシヴである一方で、繊細で美しい楽曲もひじょうに多い。たとえば個人的にそれほど好みではなかったとしても、ひじょうにクオリティーが高いアルバムであることは実感がしやすい。