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スターダスト「ミュージック・サウンズ・ベター・ウィズ・ユー」について。

1998年8月22日付での全英シングル・チャートでは、フランスのダンスミュージックユニット、スターダストの「ミュージック・サウンズ・ベター・ウィズ・ユー」が2位に初登場していた。翌週もこの順位もキープするのだが、これが最高位となり、1位になることはなかった。その間に1位だったのはアイルランドの男性アイドルグループ、ボーイゾーンの「ノー・マター・ホワット」で、アンドリュー・ロイド・ウェッバーが音楽を手がけたミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」絡みの楽曲であった。その次に1位になったのは、マニック・ストリート・プリーチャーズの「輝ける世代のために」である。

ダフト・パンクのトーマ・バンガルテルとDJのアラン・ブラックスは90年代の半ばあたりから知り合いだったようなのだが、やがてアラン・ブラックスの友人であるボーカリストのベンジャミン・ダイアモンドを加え、パリのレックス・クラブでパフォーマンスを行っている中で、「ミュージック・サウンズ・ベター・ウィズ・ユー」の元となる曲ができていったのだという。キャッチーで中毒性の高いフレーズの繰り返しはチャカ・カーンの1981年のアルバム「恋のハプニング」に収録された「さだめ(原題:Fate)」からサンプリングされている。

レコーディングが行われ、1998年の初めにアナログのシングルが制作されたものの、当初はあくまでDJがクラブでプレイするタイプのレコードが想定されていて、大々的にリリースするつもりもなかったのだという。ところがこれがクラブで人気になり、フランス国内でヒットしたのだという。

そのうち、イギリスのBBCラジオでも取り上げられ話題になり、ヴァージン・レコーズが契約して世界中にディストリビュートするようになる。ギリシャとスペインで1位になった他、様々な国々でヒットして、イギリスでもシングル・チャートの2位に初登場したということである。

ミシェル・ゴンドリーが監督したミュージックビデオには、模型の飛行機を作る少年や架空のカウントダウン番組が登場する。その間、両親は口論をしていたりもする。

この曲の歌詞はメンバー全員によって書かれたといわれ、当初はもっと長かったという。しかし、最終的には「Ooh baby, I feel right. Music sounds better with you」、または「Love might bring us both together」というフレーズの繰り返しになっている。「you」と一緒にいた方が音楽はより良く聴こえるということで、この「you」というのはドラッグのことを指しているのではないかという説もあるようだが、メンバーは否定しているという。

ディスコ・クラシック的な感覚を新しいテクノロジーでアップデートしたポップスというのはよくあるものではあるのだが、この曲のシンプルなのだが飽きさせず長持ちし、ずっと聴かれ続ける感じというのもなかなか特異である。ボーカルについてもずっとサンプリングなのではないかと思っていたぐらいなのだが、ちゃんとこのためのボーカリストが歌っていて、あえて短いフレーズというところにすごさを感じる。よくあるソウル・ミュージックのレコードなどから使えそうなフレーズを切り取ってサンプリングという感じを、わざわざ自分達で初めからやっているというか、その辺りのマジックが宿っているのかもしれない。

ヴァージン・レコーズはスターダストのアルバム制作にかなりの額を提示したといわれているのだが、トーマ・バンガルテルはダフト・パンクの次の作品に注力するためこれを断り、その末に完成したのが2001年の「ディスカヴァリー」だったりもするようである。よって、スターダストがリリースしたレコードはこのシングル1枚のみである。ワン・ヒット・ワンダーというか一発屋といっても実はその一発が大きすぎて目立っているだけで、よくよく調べてみると他にもヒット曲があったりもするのだが、スターダストの場合は本当にこの1曲だけ、しかも打率10割なのである。

いまやポップ・ミュージック史に残るモダン・クラシックとしての評価を確立しているようにも思えるが、それにしても重々しい風格のようなものとは無縁で、あくまでもライトでカジュアルな感覚で聴き続けられてしまうところに、むしろすごみを感じてしまう。あとは個人的に残念ながらそういった経験はないが、クラブ・ミュージックなのでダンスフロアで良い感じの相手と一緒に踊っている時などにこの曲がかかると、まさに音楽はあなたといるともっと良く聴こえるとか、まさにいまこのことを歌っているなと盛り上がること必至ではあるのだろう。

この曲のCDシングルは当時、この年に渋谷センター街のONE-OH-NINEからもっと駅に近い方のビルに移転したばかりのHMVで買ったような気がする。ジャケットもシンプルでとても良い。

This is...POP?!
1990sClassic Songs