1982年の全米NO.1ヒット

今回は1982年に全米シングル・チャートで1位に輝いた13曲を振り返り、シンプルにノスタルジー消費を行っていきたい。

まず、年が明けてから最初のチャートは1月9日付なのだが、前年の11月21日から継続してオリヴィア・ニュートン・ジョン「フィジカル」が1位である。そして、2位は前年の11月28日付からずっとフォリナー「ガール・ライク・ユー」である。11月21日付の2位はその前の週まで1位だった、ダリル・ホール&ジョン・オーツ「プライベート・アイズ」である。

「フィジカル」は1月23日付の全米シングル・チャートで10週連続1位となり、この時点で1977年のデビー・ブーン「恋するデビー」の歴代最長記録と並んだ。次の週も1位だとすれば、歴代新記録を更新するところであった。

I Can’t Go For That (No Can Do) – Daryl Hall & John Oates

「フィジカル」の歴代最長1位記録更新を阻止したのは、ダリル・ホール&ジョン・オーツのアルバム「プライベート・アイズ」からシングル・カットされた「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」であった。この1月30日付のチャートで「フィジカル」は4位に落ちていたのだが、フォリナー「ガール・ライク・ユー」は10週連続2位となった。

ダリル・ホール&ジョン・オーツのこの曲はダリル・ホールがドラムマシンにプリセットされていたリズムパターンに合わせて、キーボードでベースラインを弾いたものがベースになっているという。歌詞は恋愛をテーマにしているようではあるが、実際にはレコードレーベルがアーティストにかけるプレッシャーなどについて歌ったものだという。ダンス・クラブ・チャートやソウル・チャートでも1位になるなど、幅広い層から支持されていたようである。後にデ・ラ・ソウルにサンプリングされたりもしていた。

Centerfold – The J.Geils Band

2月6日付から6週連続で1位を記録したのは、J・ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」である。原題の「Centerfold」は雑誌の真ん中のページのことで、取り外してピンナップとして活用できるようになっている場合も多かったという。この曲の歌詞の内容というのが、雑誌を見ていたら高校時代に憧れていた女性のセクシーなグラビアが掲載されていてショックを受けるというもので、それで邦題が「堕ちた天使」ということになる。

キャッチーなイントロがとても印象的であり、一旦終わったと見せかけて実は終わっていない最後の方などもとても楽しい。J・ガイルズ・バンドは1960年代に結成されたベテラン・バンドだったが、それまでに全米シングル・チャートで記録した最高位は1974年にリリースした「マスト・オブ・ガット・ロスト」での12位であった。この曲を収録したアルバム「フリーズ・フレイム」も、全米アルバム・チャートで1位となる大ヒットを記録した。

フォリナー「ガール・ライク・ユー」は10週連続2位で力尽き、結局、1位にはなれなかった。ダリル・ホール&ジョン・オーツ「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」は1位から落ちた後も3週連続で2位をキープしていたが、2月27日付のチャートではジャーニー「オープン・アームズ~翼をひろげて~」にその座を奪取された。

I Love Rock ‘N Roll – Joan Jett & The Blackhearts

3月20日付で1位になったのは、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「アイ・ラヴ・ロックンロール」である。ジョーン・ジェットは70年代に日本でも「チェリー・ボンブ」をヒットさせたガールズ・バンド、ザ・ランナウェイズの元メンバーである。この曲は元々は作曲者のアラン・メリルが率いるアローズのレパートリーだったが、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツによるカバー・バージョンが全米シングル・チャートで7週連続の1位を記録した。

ジャーニー「オープン・アームズ~翼をひろげて~」は6週連続2位だった後に7位にダウンし、4月10日付からはゴーゴーズ「ウィ・ガット・ザ・ビート」が3週連続2位であった。

Chariots Of Fire – Vangelis

5月8日付のチャートで1週だけ1位だったのは、ヴァンゲリスによる映画「炎のランナー」のテーマソングである。シンセサイザーによるインストゥルメンタル曲で、スポーツ映像のBGMなどにも使われがちだったような気もするのだが、あまりはっきりと覚えてはいない。

Ebony And Ivory – Paul McCartney & Stevie Wonder

5月15日付から7週連続で1位を記録したのは、ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダーの「エボニー・アンド・アイボリー」である。ポール・マッカートニーのアルバム「タッグ・オブ・ウォー」からの先行シングルであった。ジョン・レノンが亡くなってから初めてのアルバムということで、ジョン・レノンとの関係性について歌ったといわれる「ヒア・トゥデイ」が話題になったりもした。

この曲はピアノやキーボードの黒鍵と白鍵がきれいに並んでいるように、どうして人間も肌の色の違いを超えて仲よくすることができないのだろうか、というメッセージソングである。評論家などからはあまりにも問題を単純化しすぎではないだろうか、というような批評もされたりしていたのだが、一般大衆には大いに支持されていたように思える。

ブレイク後、初めてのアルバム「アメリカン・ガール」をリリースしたリック・スプリングフィールドは先行シングル「ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー」で「ジェシーズ・ガール」に続く全米NO.1を狙ったのだが、「エボニー・アンド・アイボリー」が強すぎて、4週連続2位に終わった。

Don’t You Want Me – The Human League

そして、イギリスではすでにこの前の年に1位になっていたシンセ・ポップ・バンド、ヒューマン・リーグの「愛の残り火」が7月3日付のチャートから3週連続で1位を記録した。この前の年に開局した音楽専門のケーブルテレビチャンネル、MTVでイギリスのニュー・ウェイヴやシンセ・ポップのビデオがたくさん流れていたことから、これらがアメリカでもヒットするようになり、その現象が第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン(ちなみに第1次は60年代のビートルズやローリング・ストーンズなどがアメリカでも売れた時のそれである)と呼ばれるようになる。

その先陣を切ったのがこの曲だったのではないかと、振り返られたりもしている。シンセサイザーを主体としたサウンド、抑揚をあえておさえたようなボーカル、なんとなく薄暗いビデオなど、当時の全米シングル・チャートにおいてはかなり異質だったのだが、そこがまた魅力だったのかもしれない。

ちなみにバンドの中心メンバーであるフィリップ・オーキーはこの曲をまったく気に入っていなく、シングル・カットにも反対だったようである。イギリスでもアルバム「ラヴ・アクション」から4枚目のシングルとしてやっとカットされたところ、大ヒットしたようである。

Eye Of The Tiger – Survivor

7月24日付からは、映画「ロッキー3」のテーマソングであったサバイバー「アイ・オブ・ザ・タイガー」が6週連続で1位を記録した。清々しいまでの産業ロックという感じで、日本でもヒットしていたような気がする。

ヒューマン・リーグ「愛の残り火」が初めて1位になった7月3日付のチャートから5週連続2位だったTOTO「ロザーナ」は結局、1位には届かず、8月7日からはジョン・クーガー「青春の傷あと」が3週連続2位を記録した。

Abracadabra – Steve Miller Band

9月4日付のチャートでは、60年代から活動するベテラン、スティーヴ・ミラー・バンド「アブラカダブラ」が1位に輝いた。どこかニュー・ウェイヴ的でもあるこの曲には、よく分からないのだが不思議な魅力があった。

Hard To Say I’m Sorry – Chicago

9月11日付からは2週連続で、シカゴ「素直になれなくて」が1位であった。70年代のブラス・ロック的な音楽性からはかなり変化した、AOR的なラヴ・バラードである。

Jack & Diane – John Cougar

9月25日付でスティーヴ・ミラー・バンド「アブラカダブラ」が1週だけ1位に返り咲いた後、10月2日付からはジョン・クーガー「ジャック&ダイアン」が4週連続で1位を記録した。この前のシングル「青春の傷あと」が最高2位だったのに続いて2曲連続のヒットで、これらを収録したアルバム「アメリカン・フール」も1位とすっかり売れ切った印象である。

音楽性としてはスカッと爽やかなアメリカン・ロックでとても良いのだが、アーティスト自身は芸名であるクーガー姓が気に入っていなかったようで、後にジョン・クーガー・メレンキャンプ時代を経て、本名のジョン・メレンキャンプに改名をした。

Who Can It Be Now? – Men At Work

そして、10月30日付ではオーストラリア出身だというよく分からないバンド、メン・アット・ワーク「ノックは夜中に」が1位に輝いた。どこかユーモラスなセンスととぼけたようなボーカル、サックスの音色などが特に印象的であった。

Up Where We Belong – Joe Cocker & Jennifer Warnes

11月6日付からは3週連続で、ジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズによる映画「愛と青春の旅立ち」の主題歌が1位になった。「ベストヒットUSA」でパフォーマンスの映像も流れていたが、ジョー・コッカーのしわがれたボーカルと独特の歌い方がひじょうに印象に残った。

Truly – Lionel Richie

11月27日付からはライオネル・リッチーの初のソロ・アルバム「ライオネル・リッチー」からの先行シングル、「トゥルーリー(愛と測りあえるほどに)」が2週連続で1位を記録した。

元コモドアーズのメンバーで、1980年にケニー・ロギンスに提供した「レイディー」、1981年にはダイアナ・ロスとデュエットした「エンドレス・ラブ」がそれぞれ全米シングル・チャートで1位に輝いていた。満を持してリリースされたソロ・アルバムも好評で、これ以降、ヒット曲を連発していくようになる。

Mickey – Toni Basil

12月11日付のチャートでは、振り付け師として活躍していたトニー・バジルの「ミッキー」が1位に輝いた。

元々はイギリスのレイシーというグループがリリースした「キティ」というタイトルの曲だったのだが、歌詞とタイトルを変えたこのトニー・バジルのバージョンがヒットして、知られるようになった。

日本ではお笑いコンビ、ガレッジセールのゴリが扮する松浦ゴリエ率いるGorie with Jasmine Joannのカバー・バージョンが、オリコン週間シングルランキングで1位になっている。

ローラ・ブラニガン「グロリア」が11月27日付から3週連続で2位だったが、結局のところそれが最高位となった。

Maneater – Daryl Hall & John Oates

そして、この年最後の全米NO.1ヒットはダリル・ホール&ジョン・オーツのアルバム「H2O」からの先行シングル「マンイーター」であった。

モータウン的なリズムをキャッチーな楽曲で、サックスも最高である。男を食い尽くしてしまうような恐ろしい女性について歌われているように聴こえるが、それは当時のニューヨークの街を擬人化したイメージだという。

この年の全米NO.1ヒットは(新たに1位になった曲としては)最初も最後もダリル・ホール&ジョン・オーツであり、当時の人気を象徴しているようである。3位にはマイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」からの最初のシングルで、ポール・マッカートニーとのデュエット曲である「ガール・イズ・マイン」が上がってきている。