1983年の全米NO.1ヒット
今回は1983年に全米シングル・チャートで1位に輝いた16曲について振り返りながら、またしてもシンプルなノスタルジー消費を行っていきたい。
この前の年の12月18日付のチャートからダリル・ホール&ジョン・オーツが連続1位となっていて、マイケル・ジャクソン「スリラー」からの最初のシングルで、ポール・マッカートニーとのデュエット曲である「ガール・イズ・マイン」は最高2位に終わった。
Down Under – Men At Work
そして、オーストラリア出身のよく分からないバンド、メン・アット・ワークが「ノックは夜中に」に続いて、このシングルで2曲連続の1位を記録した。独特なユーモア感覚が特徴である。まずは3週連続で1位を記録した。
Africa – Toto
続いて2月5日付のチャートでは、TOTOの「アフリカ」が1位になった。テクニックがあるミュージシャンばかりが集まったバンドという印象もあり、AORやフュージョンが流行していた日本の音楽ファンからも人気が高かった。
Baby, Come To Me – Patti Austin with James Ingram
TOTO「アフリカ」が1週だけ1位の後、メン・アット・ワークが再び返り咲いたのだが、1週でこの曲に明け渡すことになった。ブラック・コンテンポラリー的な男女ユニットで、おそらくビデオが制作されていなかったのか、「ベストヒットUSA」で紹介される時には、ブラインドから外の様子をうかがっているようなジャケット写真が写し出される確率が高かったように思える。2週連続で1位を記録した。
Billie Jean – Michael Jackson
そして、3月5日付ではマイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」が1位になり、それから7週連続でその座をキープするという強さであった。これによって、ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド「月に吠える」、カルチャー・クラブ「君は完璧さ」が最高2位に終わった。
この曲のヒットの要因として、やはりマイケル・ジャクソンが華麗なダンスを披露するミュージックビデオの存在があったのではないかと思う。それまで、MTVでは主に白人アーティストのビデオばかりを流していたのだが、さすがにここまでのヒット曲を流さないわけにもいかず、解禁したところ大反響があり、これ以降、白人アーティスト以外のビデオもかかりやすくなったのだという。
曲の内容はスキャンダラスな側面もあり、このあたりのマイルドな危険性のようなものがまた受けたのではないかというような気もする。
Come On Eileen – Dexy’s Midnight Runners
この年になるとカルチャー・クラブ「君は完璧さ」、デュラン・デュラン「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」といった第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン勢が本格的にブレイクを果たすのだが、1位にはなかなかなれずにいた。そこで、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「カモン・アイリーン」がヒットして、タイミング良く1位の座も奪取したのであった。
Beat It – Michael Jackson
デキジーズ・ミッドナイト・ランナーズが1週だけ1位だった後には、またしてもマイケル・ジャクソンがその座に君臨することとなった。しかも、「ビリー・ジーン」と同じく大ヒットアルバム「スリラー」からのシングル・カットで、「今夜はビート・イット」である。
ダンスや決闘のシーンをフィーチャーしたミュージックビデオの出来も素晴らしく、かじりついて見ていたような人も少なくはなかったような気がする。ギターでエドワード・ヴァン・ヘイレンが参加している。
Let’s Dance – David Bowie
ナイル・ロジャーズをプロデューサーに迎えたデヴィッド・ボウイはそのキャリアにおいて、様々なコスチュームを着たりしてその設定になり切るタイプであった。今回もそれが功を奏し、「ビリー・ジーン」の時以上の完成度であった。
5月21日付の1週のみ、1位を記録していた。
Flashdance…What A Feeling – Irene Cara
映画「フラッシュダンス」の主題歌であり、6週連続で1位を記録した。この曲は日本のオリコン週間シングル・アーティストにおいても、歌詞が英語の曲であるにもかかわらず1位に輝いた。80年代に入ってからは、ノーランズ「ダンシング・シスター」に続き、2曲目の記録となった。
この曲が強すぎたため、カルチャー・クラブ「タイム」は「君は完璧さ」に続いて、最高2位を記録した。
Every Breath You Take – The Police
続いて、7月9日付からは8週連続で、ポリス「見つめていたい」である。収録アルバムの「シンクロニシティ」共々売れまくったこの曲は純粋なラヴ・ソングとしても捉えられがちなのだが、スティングはストーカーにも通じる偏執狂的な感情をテーマにしていたようだ。
この曲の大ヒットによって、エディ・グラント「エレクトリック・アヴェニュー」は最高2位に終わった。
Sweet Dreams (Are Made Of This) – Eurythmics
1981年に開局したMTVの影響で第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンが起こったのは、イギリスの特に新しいアーティストやバンドの方が以前から映像に力を入れていたからだともいわれていたような気もする。
このユーリズミックスなどは、短くてオレンジ色の髪をした女性ボーカリスト、アニー・レノックスの見た目からしてすでにとても興味をひく。それでいて、わりとソウルフルなボーカルがシンセサイザーを主体としたサウンドと絶妙にマッチして、新感覚を生み出しているようにも思えた。4週連続2位を続け、9月3日付で1位に輝いた。
Maniac – Michael Sembelo
9月10日付のチャートでは映画「フラッシュダンス」のサウンドトラックから、今度はマイケル・センベロによるこの曲が2週連続で1位を記録した。
Tell Her About It – Billy Joel
ビリー・ジョエルがこの前の年にリリースしたアルバム「ナイロン・カーテン」はなかなかシリアスな作品で、シングル・カットされた曲もトップ10入りを逃がす結果となった。しかし、前作から1年も経たないうちにリリースされたアルバム「イノセント・マン」は単純明快に楽しめる内容であり。先行シングルであるこの曲が9月24日付の全米シングル・チャートで1位に輝いた。モータウンビートを導入したポップ・ソングがこの頃にはわりと多かったのだが、この曲もそんな感じであった。
Total Eclipse Of The Heart – Bonnie Tyler
ジム・スタインマンというドラマティックでやり過ぎではないかと思えるような曲を書く人がいて、この曲もほぼその延長線上にある。この時期、やはりジム・スタインマンによるエア・サプライ「渚の誓い」もヒットしていて、「愛のかげり」という邦題がつけられたこの曲の下で3週連続2位をキープするのだが、それが最高位となったのであった。
Islands In The Stream – Kenny Rogers With Dolly Parton
ケニー・ロジャーズとドリー・パートンという、カントリー界の大御所2人によるデュエット曲である。軽快な感じが、特徴的である。10月29日付から2週連続で1位を記録した。
All Night Long (All Night) – Lionel Richie
バラード曲の印象の方が強かったりもするライオネル・リッチーだが、この曲はアップテンポで、しかもとても楽しい。いろいろパロディー化されたりもしていた当時のライオネル・リッチーだが、この曲は純粋にとても良い。11月12日付から、4週連続で1位を記録した。
Say Say Say – Paul McCartney & Michael Jackson
そして、この年の最後の全米NO.1ヒットはポール・マッカートニーとマイケル・ジャクソンのデュエット曲「SAY SAY SAY」で、年をまたいで5週連続1位を記録した。マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」にポール・マッカートニーがゲストとして参加したのが「ガール・イズ・マイン」だったが、この曲の場合はそれとまったく逆で、ポール・マッカートニーのアルバム「パイプス・オブ・ピース」にマイケル・ジャクソンがゲスト参加したことになる。
「ガール・イズ・マイン」はダリル・ホール&ジョン・オーツ「マンイーター」に阻まれて1位になれなかったが、今度は同じくポール・マッカートニーとマイケル・ジャクソンのデュエット曲である「SAY SAY SAY」が、ダリル・ホール&ジョン・オーツ「セイ・イット・イズント・ソー」の1位を阻止した。