2002年の洋楽ロック&ポップス名曲ベスト20
2002年にリリースされた洋楽ロック&ポップスからこれは名曲なのではないかと思われる20曲を挙げていきたい。
20. Dreaming Of You – The Coral
イギリスのインディーロックバンド、ザ・コーラルのデビューアルバム「ザ・コーラル」から3枚目のシングルとしてカットされ、全英シングル・チャートで最高13位を記録した。
60年代のサイケデリアやフォークロックからの影響が感じられる音楽性は高く評価され、デビューアルバムはブリット・アワードやマーキュリー賞にもノミネートされた。
「キングオブコント」に4年連続で決勝進出したことで知られる日本の実力派お笑いトリオ、GAG(以前のトリオ名はGAG少年楽団)はこの曲をライブの出囃子として使っている(メンバーの坂本純一がこのバンドのファンだったという)。
19. Bandages – Hot Hot Heat
カナダ出身のインディーロックバンド、ホット・ホット・ヒートのデビューアルバム「メイク・アップ・ザ・ブレイクダウン」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高25位を記録した。
この前の年にリリースされたザ・ストロークスのデビューアルバム「イズ・ディス・イット」のヒットによって、ポストパンクやガレージロック的な音楽性を持つバンドが注目されるようになっていたが、このバンドもそのような流れで紹介されてがちだったような気がする。
オルガンのサウンドがとてもカッコよく、途中でリズムがレゲエっぽくなったりもするこの曲は特に人気が高かった。
18. There Goes The Fear – Doves
イギリスはマンチェスター出身のインディーロックバンド、ダヴスの2作目のアルバム「ラスト・ブロードキャスト」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで最高3位を記録した。発売したその日のうちに廃盤にしたことも話題になっていた。
「NME」ではこの年の年間ベストシングルに選ばれたり、映画「(500)日のサマー」で使われていたりもする。
バンドの人気はひじょうに根強く、解散、再結成後の2020年にリリースされたアルバム「ザ・ユニバーサル・ウォント」は全英アルバム・チャートで1位に輝いている。
17. Get Free – The Vines
オーストラリア出身のインディーロックバンド、ザ・ヴァインズのデビューアルバム「ハイリー・イヴォルヴド」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで最高24位を記録した。
ガレージロックリバイバルで特に注目をあつめたバンドの一つで、この当時はより大きなブレイクも期待されていた。
ニルヴァーナと比較されることなどもあり、デビューアルバムは全英アルバム・チャートで最高3位、全米アルバム・チャート最高11位とかなり売れていた。
16. All The Things She Said – t.A.T.u.
ロシアのポップデュオ、t.A.T.u.が「ヤー・サシュラー・ス・ウマー」という曲の英語バージョンとしてリリースし、イギリスなどいくつかの国のシングル・チャートで1位に輝いた。全米シングル・チャートでも最高20位のヒットを記録していて、これはロシアのアーティストとしては史上初めてのことであった。
トレヴァー・ホーンのプロデュースによるこの楽曲は、ミュージックビデオを含めティーンエイジャーのレズビアンカップル的なイメージを前面に押し出し、話題になっていた。
日本では実はマネージャーの指示であったことが後に明かされる、テレビ朝日系「ミュージックステーション」への出演ドタキャン事件でも有名である。
センセーショナルなイメージが先行しがちではあるのだが、ティーンエイジャーの苦悩をテーマにしたポップミュージックとしてのクオリティーはひじょうに高く、ザ・スミス「ハウ・スーン・イズ・ナウ?」のカバーもとても良かった。
15. Sound Of The Underground – Girls Aloud
イギリスのオーディション番組「ポップスターズ:ザ・ライバルズ」で結成されたポップグループ、ガールズ・アラウドのデビューシングルで、全英シングル・チャートで初登場1位に輝いた。
エレクトロニックビートとサーフギターの組み合わせやポップソングとしてのクオリティーの高さで、批評家からも好意的に評価された。
全英シングルチャートではクリスマスの週を含む4週連続にわたっての1位を記録したが、カップリング曲として1994年のクリスマスシーズンに大ヒットしたイースト17「ステイ・アナザー・デイ」のカバーを収録していた。
14. Move Your Feet – Junior Senior
デンマークのポップデュオ、ジュニア・シニアのヒット曲で、全英シングル・チャートで最高3位を記録した。
ピクセルアートを使ったミュージックビデオも印象的で、フューチャーノスタルジアな音楽性とマッチしていた。
13. Freak Like Me – Sugababes
イギリスのポップグループ、シュガーベイブスの2作目のアルバム「エンジェルズ・ウィズ・ダーティ・フェイセズ」から先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで初登場1位に輝いた。
R&Bシンガーのアディナ・ハワードが1995年にヒットさせた曲のカバーで、ゲイリー・ニューマン&チューブウェイ・アーミー「アー・”フレンズ”・エレクトリック?」がサンプリングされている。
グループがメンバーチェンジをしてから最初のシングルにして、大ヒットを記録することになった。
12. Without Me – Eminem
エミネムのアルバム「ザ・エミネム・ショウ」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高2位、イギリスなどいくつかの国のシングル・チャートでは1位に輝いた。
前作「ザ・マーシャル・マザーズ・LP」の大ヒットによりポップアイコン化したエミネムの新曲として、大いに話題になった。
マルコム・マクラレン「バッファロー・ギャルズ」が引用されてもいる。
11. Clocks – Coldplay
コールドプレイの2作目のアルバム「静寂の世界(原題:A Rush Of Blood To The Head)」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高9位を記録した。グラミー賞では最優秀レコード賞を受賞している。
バンドにとって代表曲の1つとされていて、美しいピアノのリフはいくつかのR&Bやヒップホップの曲でサンプリングされている。
10. Hot In Here – Nelly
ネリーの2作目のアルバム「ネリーズヴィル」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで1位に輝いた。
暑くなってきたので服を脱いでしまおうという、シンプルかつストレートで本能的なメッセージが機能しまくるサマーアンセムとしても卓越している。
チャック・ブラウン&ザ・ソウル・サーチャーズ「バスティン・ルース」(最高!)のフレーズが引用されている。
9. Heartbeat – The Knife
スウェーデンのシンセポップデュオ、ザ・ナイフのアルバム「ディープ・カッツ」から先行シングルとしてリリースされた。
ミニマルなシンセサウンドとビョークを思わせもする女性ボーカルが絶妙にマッチして、新感覚のポップソングという感じになっている。
2004年に再リリースされて以降も全英シングル・チャートでの最高位は119位だが、それ以上にひじょうに評価は高く、00年代のベストソングリスト的なものにはわりと入っていがちである。
8. No One Knows – Queens Of Stone Age
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの3作目のアルバム「ソングス・フォー・ザ・デフ」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高15位を記録した。全米オルタナティヴ・エアプレイ・チャートでは1位に輝いたり、グラミー賞の最優秀ハードロック・パフォーマンス部門にノミネートされたりもした。
ニルヴァーナ~フー・ファイターズのデイヴ・グロールがドラマーとしてレコーディングに参加している。
7. Do You Realize?? – The Flaming Lips
ザ・フレーミング・リップスのアルバム「ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」からシングルカットされ、全英シングルチャートで最高32位を記録した。
独特なポップ感覚に定評がありながらも実験性が高いこのバンドの音楽の中で、最もポピュラーな楽曲ではないかと思われる。人は時として幸せで泣いてしまうようなこともある、ということが歌われていたりもする。
ラスベガスで撮影されたというミュージックビデオも、いろいろ独特でとても良い。
6. Lose Yourself – Eminem
エミネム自身が主演した自伝的映画「8 Mile」の主題歌で全米シングル・チャートで12週連続1位、それ以外の国々でも大ヒットした曲である。
映画の内容に沿った自伝的なリリックが特徴の楽曲だが、その真に迫りつつもキャッチーなラップパフォーマンスやサウンドは広く支持され、民衆の敵としても見られかねないエミネムのアティテュードを、クールなものとして定義したようにも思える。
5. Hurt – Johnny Cash
50年代のロックンロール時代から活躍するポップミュージック界のレジェンド、ジョニー・キャッシュはリック・ルービンがプロデュースするカバーアルバム「アメリカン・レコーディング」シリーズによって再評価されていた。
ナイン・インチ・ネイルズのカバーであるこの曲はアルバム「アメリカンⅣ:ザ・マン・カムズ・アラウンド」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高39位を記録した。
ジョニー・キャッシュ自身の人生を象徴するようなミュージックビデオは特に高く評価され、グラミー賞を受賞しているほか、歴代ベストミュージックビデオ的な企画があるとかなりの頻度で上位にランクインしている。
4. Time For Heroes – The Libertines
リバティーンズのデビューアルバム「リバティーンズ宣言(原題:Up The Bracket)」からシングルカットされ、全英シングル・チャートで最高20位を記録した。
ザ。ストロークスのブレイクをきっかけとしたインディーロックの復権はアメリカ国内のみならぬトレンドであったが、イギリスにおける代表格といえばリバティーンズであり、ひじょうに強固なファンダムを形成していたということができる。
ファンの間で特に人気が高かったこの曲は、メーデーに参加したピート・ドハーティの実体験に基づいているという。
3. House Of Jealous Lovers – The Rapture
アメリカのインディーロックバンド、ザ・ラプチャーの2作目のアルバム「エコーズ」から先行シングルとして2003年に再発された時に、全英シングル・チャートで最高27位を記録した。
ポストパンク的でありながらダンスミュージックとしても機能しがちな、カウベルの音色もとてもカッコいい曲である。
2. Work It – Missy Elliott
ミッシー・エリオットの4作目のアルバム「アンダー・コンストラクション」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高2位を記録した。
ティンバランドとの共同プロデュースによるサウンドは80年代のオールドスクールヒップホップから強い影響を受けていて、RUN D.M.C.「ピーター・パイパー」がサンプリングされてもいる。
1. Losing My Edge – LCD Soundsystem
LCDサウンドシステムのデビューシングルで、全英シングル・チャートでの最高位は115位だが、それ以降のポップミュージックにあたえた影響はひじょうに大きく、モダンクラシックとしての評価も定着している。
ポストパンクとダンスミュージックのミクスチャーが理想的に実現しているのだが、この曲が生まれるに至ったプロセスとも関係する歌詞には数多くのアーティストやサブジャンルの名称が登場する。
同じレーベルからリリースされていたザ・ラプチャー「ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズ」と共に、00年代のポストパンクリバイバルにおいて、ひじょうに重要な役割を果たした曲である。