1989年の洋楽ロック&ポップス名曲ベスト20

1989年といえば80年代最後の年であったのと同時に、日本では昭和が終わって平成がはじまった。美空ひばりや手塚治虫が亡くなって一つの時代の終わりを感じさせらる一方で、海外ではベルリンの壁が崩壊したりもしていた。TBSテレビ系で土曜の深夜に「三宅裕司のいかすバンド天国」が放送を開始して、バンドブームの一般大衆化、低年齢化に拍車をかけた。その頃、アメリカやイギリスでリリースされていたポップ・ソングの中から、重要だと思われる20曲を選んでいきたい。

20. Veronica – Elvis costello

アルバム「スパイク」からの先行シングルで、ポール・マッカートニーとの共作曲である。記憶を失った老婦人をテーマにした内容は、エルヴィス・コステロ自身の祖母がモチーフになっているという。アメリカでは全米シングル・チャートで最高19位と、キャリア中最高位を記録した。

19. Good Life – Inner City

デトロイト・テクノの重要人物、ケヴィン・サンダーソンを中心とする音楽グループ、インナー・シティのヒット曲で、全英シングル・チャートで最高4位のヒットを記録した。カラフルなシンセ・サウンドとパリス・グレイによるアップリフティングなボーカルがマッチした、ハウス・クラシックである。

18. Getting Away With It – Electronic

ニュー・オーダーのバーナード・サムナーと元ザ・スミスのジョニー・マーによるスーパーユニット、エレクトロニックのデビュー・シングルで、ゲスト・ボーカリストとしてペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントが参加している。全英シングル・チャートでは、最高12位を記録した。

17. Express Yourself – Madonna

マドンナの4作目のスタジオアルバム「ライク・ア・プレイヤー」から2枚目のシングルとしてカットされ、全米シングル・チャートで最高2位を記録した。ジェンダー・イコーリティ的なメッセージを含むアップリフティングな楽曲で、ホーン・セクションを効果的にフィーチャーしたファンキーなサウンドも素晴らしい。

16. Here Comes Your Man – Pixies

ピクシーズの2作目のアルバム「ドリトル」に収録され、シングル・カットもされた曲で、全米モダン・ロック・トラック・チャートでは1位に輝いている。ブラック・フランシスによって、14,5歳の頃に書かれた曲だが、あまりにもポップすぎるという理由でレコードにはなっていなかったのだが、「ドリトル」のプロデューサー、ギル・ノートンが気に入り、発売されることになったという。2009年の映画「(500)日のサマー」には主人公のトムが、カラオケでこの曲を歌うシーンがある。

15. Chime – Orbital

イギリスのインディー・ロック・ファンにもひじょうに人気があったテクノ・ユニット、オービタルのデビュー・シングルで、全英シングル・チャートで最高17位を記録した。オリジナルのバージョンは、カセットテープにレコーディングにレコーディングされていたという。

14. About A Girl – Nirvana

ニルヴァーナのデビュー・アルバム「ブリーチ」に収録された曲で、カート・コバーンがビートルズの初期のアルバムを繰り返し聴いた後で書かれたといわれている。当初はあまりにもポップすぎるという理由で、アルバムに収録するのを躊躇していたという。後にCDやDVDもリリースされた「MTVアンプラグド」のライブでは、1曲目に演奏されていた。

13. All Around The World – Lisa Stansfield

リサ・スタンスフィールドのデビュー・アルバム「アフェクション」からの先行シングルとしてリリースされ、イギリスをはじめヨーロッパのいくつかの国々のシングル・チャートで1位に輝いた。

12. She Bangs The Drums – The Stone Roses

ストーン・ローゼズのデビュー・アルバム「ストーン・ローゼズ」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高34位を記録した。「NME」ではこの年の年間ベスト・シングルに選ばれている。

11. Monkey Gone To Heaven – Pixies

ピクシーズのアルバム「ドリトル」からの先行シングルで、全英シングル・チャートで最高60位を記録した。環境保護や、聖書における数秘術などについて歌われている。

10. W.F.L. – Happy Mondays

1988年のアルバム「ならず者」に収録され、シングルでもリリースされた「ロート・フォー・ラック」のリミックス・バージョンである。インディー・ロックとダンス・ミュージックが融合したマッドチェスター・ムーヴメントの感じが伝わりやすい、楽曲でありミュージックビデオになっている。

9. I Am The Resurrection – The Stone Roses

ストーン・ローゼズのデビュー・アルバム「ストーン・ローゼズ」の最後に収録された楽曲で、シングル・カットもされた曲である。全英シングル・チャートでの最高位は33位であった。曲の後半はインストゥルメンタルパートが続き、バンドの高い演奏力が感じられることもあって、ライブでもひじょうに重要な楽曲になっていた。

8. Pacific State – 808 State

マンチェスター出身のテクノユニット、808ステイトのヒットシングルで、全米シングル・チャートで最高10位を記録した。ユニット名は「やおや」の愛称でも知られるローランド社のドラム・マシン、TR-808から取られている。とにかくたくさんのバージョンが存在することでも話題になっていた。

7. Personal Jesus – Depeche Mode

デペッシュ・モードのアルバム「ヴァイオレーター」からの先行シングルで、全英シングル・チャートで最高13位を記録した。バンドのそれまでの楽曲とは異なり、ギターのサウンドやブルース的なリフが効果的に用いられていることが特徴的である。後にジョニー・キャッシュやマリリン・マンソンによってカバーされた。

6. Me Myself And I – De La Soul

デ・ラ・ソウルのデビュー・アルバム「3フィート・ハイ・アンド・ライジング」からシングル・カットされ、全米シングル・チャートで最高34位、ホット・ラップ・ソング・チャートやダンス・クラブ・チャートでは1位を記録した曲である。ヒップホップのステレオタイプを否定し、コンシャスでユニークなところが画期的であった。

5. Back To Life (However Do You Want Me) – Soul II Soul

DJで音楽プロデューサーのジャジーBを中心とする音楽ユニット、ソウル・Ⅱ・ソウルのサウンドはドラムマシンによってつくられたリズムが特徴的で、グラウンド・ビートなどと呼ばれていた。デビュー・アルバム「キープ・オン・ムーヴィン」収録曲をシングル向けにアレンジしたこの曲は、全英シングル・チャートで1位に輝いた。

4. Debaser – Pixies

アルバム「ドリトル」の1曲目に収録された、ひじょうにテンションが高めの楽曲である。1929年に公開されたフランスのサイレントムービー「アンダルシアの犬」について歌われている。当時はシングル・カットされていなかったがひじょうに人気が高く、1997年にベスト・アルバムのプロモーションのためにシングルでもリリースされた。

3. Fools Gold – The Stone Roses

ストーン・ローゼズがデビュー・アルバムよりも後に新曲としてリリースしたシングルで、全英シングル・チャートで8位を記録したが、イギリス以外で発売されたデビュー・アルバムにはこの曲が追加されている場合がわりとある。ダンス・ビートの導入がひじょうに特徴的であり、マッドチェスター・クラシックの1つだといえる。イギリスの人気テレビ番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」でストーン・ローゼズがこの曲、ハッピー・マンデーズが「ハレルヤ」を演奏した回がマッドチェスター・ムーヴメントの大衆化を印象づけたともいわれている。

2. Like A Prayer – Madonna

マドンナの4作目のオリジナルアルバム「ライク・ア・プレイヤー」のタイトルトラックであり、先行シングルである。アメリカ、イギリスをはじめ、多くの国々のシングル・チャートで1位に輝いた。ゴスペル音楽の要素を取り入れたり、宗教的モチーフの使い方が保守的な人々を怒らせたりもしたのだが、ポップ・ソングとしての強度が圧倒的であり、マドンナのすべての楽曲で最も優れていると評される場合もある。

1. Fight The Power – Public Enemy

スパイク・リー監督の映画「ドゥ・ザ・ライト・シング」のテーマソングとして、この年の夏にリリースされた曲である。全英シングル・チャートでは最高29位、全米ホット・ラップ・シングル・チャートでは1位を記録している。レイシズムやファシズムに抵抗するプロテストソングとしての価値は今日でも有効であり、2020年には続編がリリースされたりもした。2021年にアップデートされた「ローリング・ストーン」誌の歴代ベスト・シングル的なリストでは、アレサ・フランクリン「リスペクト」に続く2位に選ばれている。