カーズの名曲ベスト10

1944年3月23日に生まれたリック・オケイセックがベンジャミン・オールらと1976年にボストンで結成したニュー・ウェイヴバンド、カーズはデビュー当時からチープなシンセサイザーを取り入れたキャッチーな楽曲をヒットさせたり、ユニークなミュージックビデオが話題になったことで知られる。今回はそんなカーズの楽曲の中から、これは特に名曲なのではないかと思える10曲をあげていきたい。

10. I’m Not The One (1981)

1981年のアルバム「シェイク・イット・アップ」のA面3曲目に収録されていた曲なのだが、1985年の「グレイテスト・ヒッツ」からリミックスされたバージョンがシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高32位を記録した。カシオトーンという当時わりと安価で一般庶民にも買うことができたシンセサイザーに近い音が入っていて、この辺りにとても親しみが持てたりもする。

9. Tonight She Comes (1985)

80年代半ばにはすでにすっかりメインストリーム化していたカーズの「グレイテスト・ヒッツ」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高7位を記録した曲である。実験性や冒険心のようなものはそれほど感じられないのだが、いかにもカーズ的なセンスのままメジャーなサウンドになっていて、売れているものが大好きなミーハーなポップスファンとしてはとてもうれしかった。

8. Magic (1984)

「ハートビート・シティ」のアルバムから2枚目のシングルとしてカットされ、全米シングル・チャートで最高12位を記録した。「Summer, it turns me upside down」というフレーズからはじまるように、サマーアンセム感があふれているわけだが、プールを舞台にしたミュージックビデオも楽しくてとても良い。ちなみにブルース・スプリングスティーン「ダンシング・イン・ザ・ダーク」とプリンス「ビートに抱かれて」とレイ・パーカー・ジュニア「ゴーストバスターズ」とサザンオールスターズ「ミス・ブランニュー・デイ」がヒットしていた夏である。

7. Touch And Go (1980)

ニュー・ウェイヴという言葉の解釈はイギリスとアメリカとではチト(河内)異なっていたような気がしなくもないのだが、カーズはアメリカでいうところのニュー・ウェイヴというか、よりポップでキャッチーなところに特徴があった。とはいえ、3作目のアルバム「パノラマ」からシングルカットされたこの曲にはややエクスペリメンタルに感じられるところもあり、全米シングル・チャートでの最高位は37位であった。同じアルバムからはこの曲しかチャートインしていない。

6. Let’s Go (1979)

カーズの2作目のアルバム「キャンディ・オーに捧ぐ」からの先行シングルで、全米シングル・チャートでは最高14位を記録した。どうしてカーズというバンド名かというと、メンバー全員が車好きだからという身も蓋もなさがとても良い。車はロックンロールの歴史上、性的なメタファーとしても用いられてきた。「キャンディ・オーに捧ぐ」のジャケットにもセクシーな女性のイラストが描かれているのだが、ファンタジー色が濃いめで好感が持てる。

5. Shake It Up (1981)

1982年に全米シングル・チャートで最高4位を記録し、カーズにとって初の全米トップ10ヒットとなった曲である。前作アルバム「パノラマ」がややエクスペリメンタルだった反動か、よりポップでキャッチーに振り切った結果が大ヒットということで、分かりやすくてとても良い。アルバムジャケットにも登場しているようないかにもアメリカンな女性が、ビデオに登場しているところも好ましい。

4. You Might Think (1984)

カーズにとって5作目のアルバムとなる「ハートビート・シティ」から先行シングルとしてリリースされ、全米シングル・チャートで最高7位を記録した。曲そのものもキャッチーでとても良いのだが、コンピューターグラフィックを駆使し、リック・オケイセックがハエになったりもするミュージックビデオがひじょうに印象的であった。第1回MTVアウォードでは、マイケル・ジャクソン「スリラー」、シンディ・ローパー「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」、ポリス「見つめていたい」、ハービー・ハンコック「ロックイット」などを抑えて、年間最優秀ビデオに選ばれている。

3. My Best Friend’s Girl (1978)

カーズのデビューアルバム「錯乱のドライブ」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高35位を記録した。イギリスでは全英シングル・チャートで最高3位の大ヒットを記録している。友人に恋人を奪われるという経験がリック・オケイセックにはなかったようなのだが、ポップソングのテーマとしては良いのではないかと思い、この曲をつくったというのがとても良い。

2. Drive (1984)

「ハートビート・シティ」から全米シングル・チャートでは最高3位と、カーズにとって最大のヒット曲となっている。曲をつくったのはリック・オケイセックだが、リードボーカルはベンジャミン・オールである。この曲はリリースの翌年に開催されたチャリティーイベント「ライヴ・エイド」でも大きくフィーチャーされ、広く知られるようになった。

1. Just What I Needed (1978)

カーズのデビューアルバム「錯乱のドライブ」からシングルカットされ、全米シングル・チャートで最高27位を記録した。邦題は「燃える欲望」である。この曲もリック・オケイセックによってつくられ、ベンジャミン・オールが歌っている。デモテープの時点から、地元のラジオ局では人気がああったといわれている。ニュー・ウェイヴ的な楽曲にチープなシンセサイザーが効果的に用いられていて、パワーポップ的なキャッチーさもあるという素晴らしい楽曲である。